「綺麗だな〜」
兼続と政宗はイルミネーションが綺麗で有名な場所へやってきた。兼続がどこからかその情報を仕入れて、政宗に行きたいと言ったのだった。デートらしいデートもしたことがなかったので、了承したものの既に帰りたい気分でいっぱいだった。
確かにイルミネーションは綺麗だが、人も多い。あちらこちらにいる人は全て恋人同士で、それぞれの世界に浸りながらイルミネーションを眺めている。
「これでは、イルミネーションを見に来たというより、人を見に来たのと同じではないか」
ぶつぶつとそんなことを呟く。あからさまに政宗が不機嫌なのはそんな理由からだった。
人の多さが嫌なのだ。それ以上に浮き足立った空気が嫌で嫌で仕方ない。
そもそもクリスマスというのが好きではなかった。政宗の中では恋人たちのクリスマスは食事した後にセックスして終わりなくだらんものである。兼続が来たいというから来たのであって、クリスマスやイルミネーションを楽しむという気持ちは皆無だった。
段々と政宗の胸がむかむかし始めた。
「ここはな、とある伝説があるんだ」
手を引っ張り、兼続は恋人たちの中を歩き始めた。
「手、手・・・」
人ごみで兼続と手を握るのは苦手だ。他人から好奇な目で見られたくない。
ただでさえ、政宗の見た目は人の目を引く。それが、長身の男と二人手を繋いで歩いていたら益々目を引くことになるだろう。
「大丈夫だ、それぞれ自分たちの世界に夢中だからな」
ちらちらと周りを見れば、その通りで、各々の世界に浸っている。誰も政宗たちを見ていない。
ほっと胸を撫で下ろした。
自分のこんな性格をどうにかしたいと思っていても、幼少期より培われた性格はどうしようもない。
他人の目など気にせず、自由に兼続と手を繋いで歩きたいのだが、そう出来ないのが悔しかった。
「着いたぞ」
一際、人ごみの多いところで兼続は止まった。大きなもみの木の下で、その木には目が眩むまでの電灯がつけられていた。
周りを見れば、キスばかりしてる。呆然と兼続の顔を見た。
「ここでキスするとな、その相手と永遠に結ばれるそうだ!」
(そんなワケあるか、馬鹿め!大体、ここに何人いると思う?そんな人数が結ばれるワケがなかろう!)
口にしてしまいそうだったが、目をきらっきらっと輝かせて言う兼続にそれを言ってもどうしようもないと止めた。
キスをし終えた恋人たちは最高の喜びで満ちている。今が一番最高とでも言うように。
(夢見がちにもほどがある)
くだらぬと思っていても、兼続もあんな顔をするのだろうかと考えるとそれが見たい。
政宗は悩んで、兼続が目を瞑るよりも先に不意打ちでキスをした。
「これで満足か!」
不意打ちに目を丸くさせたが、直ぐに満面の笑顔に変わる。
周りのどんな恋人たちよりも幸せに満ちているように見えた。かぁっと顔が熱くなるのが判った。
「も、もう帰るぞ!」
さっと顔を逸らせると今度は政宗が兼続の手を掴んで歩き始めた。
終