【現代パロディです】
「景勝様」
仕事の終わり際、社長室で渡されたのは正方形の綺麗に包装された箱だった。
景勝が疑問そうに兼続の顔を見る。
「今日はクリスマスイブですから、私からのささやかなプレゼントです」
毎年、特に贈ったり貰ったりはしてなかったが今年兼続は景勝への贈り物を用意していた。
「今日か・・・・」
そう呟きながら、景勝は引き出しを開けた。
同じように包装された小さな箱を取り出すと、兼続に渡した。
「今日がそうだとは思わなかったが、これはわしからだ」
「私にですか?」
景勝はこくりと頷いた。
景勝も自分へ用意しているとは思わなかった兼続は少し驚いた様子であった。
包みを開こうとすると、景勝に止められた。家で見てくれとのことだった。
兼続は家に帰るなり、まず先にそれを開いた。
景勝が何を自分に送ってくれたのだろうかと、そればかり気になっていた。
そこの中にはネクタイピンが入っていた。
兼続はそれを見た瞬間、かぁっと顔が紅潮したのが分かった。口を押さえ、その場に蹲った。
ネクタイピン自体はそんなに大したものではないが、景勝から贈ってくれたいうことが兼続にそんな反応を起こさせた。
そのネクタイピンは数ヶ月前、雑誌をめくった際に見つけたものだった。
デザインが珍しく、気になった。問い合わせてみようとまで一時は思ったのだが、そのまま、兼続は忙しさもあって忘れてしまった。しかし、景勝はそれを覚えていた。
特に兼続が欲しいと言ったわけではない。兼続の反応を見ていた景勝はそれが兼続が欲しいものだと気付いたのだろう。
自ら調べて、注文したのだった。
嬉しくて赤面した。
ネクタイピンを握ったまま、動けない。
景勝が注文する姿を想像してみた。そんなことを想像するだけで、胸が幸せで満ち溢れた。
そのネクタイピンをつけてみた。よろめきながらも、鏡の前に立つ。
青いネクタイにそのピンは映えた。
やはり良かった。
「・・・月曜日にどんな顔して会えばいいのでしょうか?」
このネクタイピンをつけて景勝の前に現れたら、どんな反応をするのか楽しみで仕方なかった。
終