「兼続殿、三成殿!雪合戦でもしませんか?」
外が一面の雪景色と変わったある日、おもむろに幸村がそう言い出した。
「いいだろう!」
兼続は目を輝かせ、賛成する。
「いやだ」
三成は怪訝な顔をし、それを断った。
「何故だ?」
兼続が問えば、寒いからと答える。
「大丈夫!着込めば寒くない!!」
兼続は幸村と二人で、三成に着物などを着せ始めた。
もこもことたくさんの物を着せられ、三成は団子のようになった。
「負けないからな!」
「私もです!!」
そんなことをきゃっきゃ、きゃっきゃ、女子の戯れのように話している二人を三成は呆れ顔で見つめた。
外に出るとやはり寒く、三成は直ぐに屋敷に入りたいと思った。
二人は三成を忘れて、雪の玉を投げ合っている。
(ガキ二人・・・)
輪に入りたいわけではなかったが、一人屋敷に戻るのもいやで、三成は二人のやりとりを黙って見ることにした。
「ぶっ!」
幸村の顔に思いっきり雪の玉がぶつかり、地面へと倒れた。
それを見ながら兼続が笑う。楽しそうだった。
三成は二人の間を行き交う雪を目で追う。何だが、心が疼いた。
いきなり視界が真っ白になったかと思えば、ぼふっと倒れこんでしまった。目の前に空が広がる。
雪玉を投げられたのだと気付くのに、しばらく時間がかかった。
「ははははは!」
「三成殿!大丈夫ですか?」
大丈夫かと訊きながらも幸村も笑っていた。
「貴様ら!!」
がしっと雪を掴むと、それを雪の玉にし兼続たちに投げつけた。
「三成が怒ったぞ!幸村、共同作戦だ!!」
「判りました!!」
こうして兼続・幸村対三成の雪合戦が始まった。
意外と白熱してしまい、気付いた頃には日が暮れていた。走り回ったせいで熱い。汗が零れ落ちた。
「楽しかったな!」
「はい!また、やりたいです!」
三成だけはげんなりとしていた。二人が敵になり、散々追い掛け回されたからだ。
「三成も楽しかっただろう?」
「私は楽しかったです!!」
二人を見ると、満面の笑みを浮かべていた。思わず、ふよっと口元が緩んでしまいそうだったのを堪えた。
「二対一は不利だろ!!」
「それは悪かった!」
悪いとは思っていないとしか感じられない素振りで兼続は答えた。ぷっと思わず、笑ってしまった。
釣られて兼続も幸村も笑った。
「・・・また、やれるだろうか」
先を考えるとどうなるか判らない。三成は笑うのを止めると、ぽつりとそう言った。
「やれるとも!いくらでもな!」
「やれますよ!」
どうしてそんな根拠ないことが直ぐに言えるのかと三成は疑問に思ったが、心にかかり掛けた靄がすっと消えた。
「・・・そうだな」
小さく頷いて、三成は二人に向かい微笑を浮かべた。
終