「寒いので手を繋いでいいですか?」
そんなのはただの口実で、ただ貴方と手を繋ぎたかっただけ。
「兼続殿の手、あたたかいですね」
心の鼓動が速まる音が聞こえてしまわないだろうかと心配になった。
でも、この手を離したくはない。
「幸村の手は冷たいな」
すみません。失礼だとは思うのですが、貴方の顔が見れません。
きっと、私の顔は赤面しているに違いない。
「寒いのはお嫌いですか?」
私は好きです。
貴方と手が繋げるから。
「好きだ」
・・・・冬がですよねなんて訊けない。
一瞬ですが、鼓動が高鳴ってしまいました。
何と恥ずかしいのだろうか。
「幸村と手を繋げるから」
貴方の顔を見れば、満面の笑顔。
嘘ではないと、信じてもいいですか?
「幸村、痛い」
思わず力いっぱい抱き締めてしまっていた。
「すみません」
離れようとしたら、抱き締め返された。
心の臓が壊れそうなくらいに騒いで煩い。
腕の中の貴方はあたたかくて、本当に抱き締められているのだと実感させられた。
「兼続殿」
「なんだ?」
「好きです」
「うん」
頷いて、私も好きだよと兼続殿は言った。
不覚にも嬉しくて、涙が出てしまった。
情けない。
格好の悪いところなど見せたくもなかったのに。
「幸村・・・・」
兼続殿が涙を舐めてくるのが恥ずかしくて、くすぐったくって、つい笑ってしまった。
兼続殿も笑ってくれた。
笑顔がまた素敵で、胸締め付けられる。
好きだと、改めて思う。
「帰ろう」
差し出された手を握って、二人で歩いた。
来た道を見れば、二人分の足跡がついている。
それが嬉しくて、何度も私は振り返りそれを見た。
終