部屋で書物を読んでいるところに兼続がやって来た。そして、突然脈絡も無いことを言った。
「謙信公、冬でもあたたかく居られる方法をご存知ですか?」
そんなことをにこにこと笑いながら兼続が訊けば、謙信は書物を置き一言返した。
「酒」
返ってくるだろうとは思っていた答えだったが、正しくそのままで兼続は笑ってしまいそうだった。
「飲みすぎはいけません、謙信公。もっと良い方法があるのです!」
目を煌めかせながら兼続がそう言うので、何か斬新なことでも思いついたのかと謙信は思った。
兼続の行動を待つ。
急にぎゅっと抱き締められ、下から兼続が顔を覗いた。
「こうすれば火がなくともあたたかいですよ!」
確かにあたたかいはあたたかいが、常にこうして居ろと言うのだろうか。
謙信はじっと兼続の顔を見返した。
「我、以外にもか?」
謙信は己以外にもそうするのかと訊いた。
兼続はにぱっと笑う。
「私は謙信公にしかしません!!」
言葉を訊き、謙信の動きが一瞬止まった。
「謙信公?」
首をかしげ、顔を覗けば強く抱き締められる。そして、首にそっと口付けられた。
「謙信公!ま、待ってください!」
「待てぬ」
まさか、こんな結果になるとは思ってもみなかった兼続は慌てた。
ばたばたと暴れたが、与えられたあたたかな熱に直ぐに抵抗を止めた。身体は正直だった。
「私が言いたいのは、こう抱き締めあうとあたたか…っ」
口付けられ、言葉を制される。
この方があたかいと言うように、何度も口付けられた。
「確かにあたたかったですが、逆にあつすぎます!」
謙信に膝枕をしてやりながら、兼続はそう言った。
行為のあとはあたたかいどころか汗だくだった。風邪を引かぬように汗を拭い、さっさと着物を着込んだ。
「いやか?」
謙信が下からそう訊けば、兼続は赤面した。
「……いやではないです」
ぽそりと呟く。
満足そうに謙信は笑った。
「冬は良い」
そして、そう一言告げた。
終