「寒くなりましたね」
兼続が庭先を見ながら、助右衛門に言った。
「あ」
そう声を発したかと思えば、縁側へと足を運ぶ。
そして空を見つめた。
空からはらはらと落ちてくる白の粒。
「雪ですよ、助右衛門殿」
嬉しそうに兼続は振り返った。
童みたいだと助右衛門は思い、くすっと笑う。
「助右衛門殿は雪はお嫌いでしょうか?」
聞けば、にこりと笑い
「好きですよ」
一言。
立ち上がり、縁側へと足を向かわせると兼続の横に立つ。
「貴方がいらっしゃるのなら、どんな季節も楽しいですから」
手を伸ばして、指を絡める。
「それは良かった」
兼続も強く助右衛門の手を握った。
二人ではらはらと落ちてくる雪をいつまでも見つめた。
終