秋の風が吹く、心地よい夕暮れ。
兼続は景勝が季節を味わいたいと云うのに従い、共に川辺を歩いていた。

朱色に染まりつつある、木々の葉。
愛を囁きあう虫たち。
それらをより一層魅せる、茜色の夕暮れ。

たまには馬にも乗らず、ゆるりと歩くのも悪くないなと思った。

ふと、目に赤が飛び込んできた。
彼岸花が連なって咲き乱れている。
風に靡いて、赤い道を作る。

兼続はそれを見、驚倒したようだった。
どうした?と景勝が声を掛ける。

「血・・・のようだと思いまして・・・」

靡くそれは赤の川。
そのもの自体が血を吸ったのではないかと思えるまでの赤。
破けた包は飛び散る血液。

景勝は血が凍るような気がし、兼続を見た。
まるで戦場にいるような険しい顔をしていた。

赤が兼続に戦場を見せていた。
己れの血が滾る。
戦などないに越したことはないのと思いつつも、己れの中のものが血を望んでいるのをありありと判らせる。

「兼続」

景勝が名を呼ぶと、我に返ったようだった。
詫びて、表情を緩ませた。

そんな自分を嘲笑うように花々がそよぐ。
風に揺られ、兼続に語りかける。
揺られる赤に誘われる。

景勝が後ろから抱き締め、そっと兼続の瞳を手で覆う。
赤が隠れ、見えなくなった。
戦があれば、景勝や家臣、民たちを苦しめてしまうことになる。
それを景勝の行動で、痛いまでに思い出させられた。

「もう、私には見えません」

景勝の手に手を添えると、腰の方へと手を下ろさせた。

ありがとうございますと述べて、静かに項垂れる。
景勝に気を使わせてしまったことに己れを責めた。


赤が揺れる。
ゆらゆらと揺らめきあう。

それでも兼続はもう揺るがなかった。









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後記

ただ二人がバカップルなだけっていうSSでした。





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