風花
晴天だというのにも関わらず、雪がちらつき始めた。
珍しいこともあるなと、慶次は縁側へと足を運ぶ。
雪が木々に触れ落ちる姿は、まるで桜の花弁が舞っているようだった。
強く吹く風は、あの日の音を運んでくる。
ぽんぽんと軽快響く小太鼓の音。
笛の音と三味線の音がそれに続く。
心躍らされて、裸足なのにも関わらず庭へと出た。
風に流れる雪と共に舞い踊る。
雪の冷たさよりも、太陽の日差しは暖かく、眩い。
ひとしきり舞うと、ぱたりと動きを止めて天を仰ぎ見た。
雪は絶えず降り続く。
ひとつ、落ちた雪を手で拾うと、雪は直ぐに消えてなくなった。
あぁ、元気だろうか。
慶次は思った。
俺を見ているのだろうか。そこで。
相変わらず、天からは白い雪と眩しい光。
一瞬、その二つの間から、ふわりとやわらかな風が慶次を抱き締めるように吹いた。 にこりと慶次は笑う。
変わりないのだと判ったからだ。
「お元気で何よりです、父上」
終