「…痛かったら言ってください」
幸村は兼続の耳元で、そっと囁いた。先ほど、己の身体から溢れたものを舐めていたのを思い出し、身体が疼いた。
もっと触れて欲しい。だが、恥ずかしい。
矛盾した気持ちがぐるぐると巡る。
心臓が益々高鳴った。
濡れそぼった部分に幸村の指が触れた。
身体が震える。くすぐったいのに、気持ち良かった。
「はっ…」
顔を赤らめながら、吐息を吐くと唇を幸村の唇で塞がれた。
押し付けるように口づけてから、舌が唇を舐めた。ゆっくりと唇を開くと、中へと舌が入ってくる。それを舌先でつついたり、吸ったりした。
夢中になり絡ませあっていると、幸村がより深くへと指を入れてきた。
「ふ、んん…」
押し広げて入ってくる指は僅かな痛みと共に感じたことのない感覚を兼続に与えた。意識が遠くなるような感覚に、幸村の手を強く握った。声が出ていることなど気にならなくなる。中を弄られる快感に恥辱を感じつつもそれに身を投じた。
幸村は指をゆっくりと入れた。少し入れては兼続に様子を訊ね、またゆっくりと入れる。
兼続は譫言のように、うん、うん、とだけ繰り返した。
幸村は濡れた熱い襞の感触を確かめるように中を探る。
痛みが緩和され、兼続の唇から甘ったるい吐息が零れると、指を増やした。
締め付けながらも受け入れるそこに、まだ大丈夫そうだと感じた。
兼続の中に入りたい。
下半身が猛り、呼吸が荒くなった。
身を捻らせ喘ぐ兼続と繋がり合いたい。
淫靡な音を立てるそこを弄る指とは反対の手で、幸村は下帯を外した。
猛りきったそこも、中へと入りたくて仕方ないようだった。
幸村は指を抜いた。くちっ、と水音がし、粘膜が切なげに絡み付く。
その膜を幸村は己のものに塗りつけた。
「…は、はっ、は、…」
兼続が肩で呼吸を繰り返しながら、幸村のものを見た。初めて見る男の猛ったそれに恐る恐る手を伸ばす。
熱く硬いそれは、兼続が触れるとびくんと震えた。
軽く握ると、とくんとくんと血脈が流れているのが解った。
「これを入れるのだろうか…」
言葉にし、兼続は恐怖で身体を小刻みに震わせた。こんな大きなものが入るのかと不思議でならない。
「…そうです」
幸村の顔を見上げれば、触れられた恥ずかしさで赤らんでいた。
その顔を見、子宮が疼いたのが解った。
怖いが、幸村が欲しい。もっと二人一つになりたいと感じた。それが繋がり合うことの喜びなのかも知れない。
恐怖を感じつつも兼続は微笑した。
抱き合い、幸村は優しく兼続に口づけた。何度も諭すように口づける。
手で陰茎を掴むと、探るように兼続の蜜所をそれでなぞった。
むず痒さのある快感。
また濡れる。
焦れったさに腰を揺らした。
一点を見つけ、幸村はそこにあてがうと手を離した。
熱く大きな硬いそれが入れられるのだと解ると、兼続の身体は再び震え始めた。
「やめましょうか…？」
幸村が不安そうに顔を覗く。入れたいが、兼続に無理はさせたくなかった。
「ん、大丈夫だ」
目尻に溜まった涙を誤魔化すように兼続は笑う。恐怖はあるが、幸村を受け入れたいという気持ちのが大きい。
幸村がほんの僅か腰を寄せた。ぎちっと押し広げられるそこは痛みを伝える。
まだ経験のないそこは幸村のを頑なに拒んだ。
兼続が荒く息を吐き、目尻から涙を落とした。
やはり止めようと腰を引こうとすると、兼続が腕を掴んだ。顔を見れば、ふるふると頭を振り、幸村の身体にしがみついた。
「いいですか…？」
訊ねれば小さく、うんと頷いた。口づけながら、身を寄せた。
「はっ、ぅ…うっ…」
鈍く激しい痛みが兼続の身体を走る。みしみしという音が鼓膜を震わせているようだった。痛みに眉をしかめた。
身が近くなれば近くなるだけ痛みが増す。何かが切れるような感覚があり、血の匂いがした。
幸村は兼続の様子を気にしながら中に入れた。兼続の中の湿った襞が幸村のものに絡みつく感覚は感動を生んだ。
己も初めての経験に余裕はなかったが、痛みに苦しむ兼続に無理はさせたくはなかった。
「大丈夫でしょうか…」
入っている部分を恐る恐る見れば、兼続から血が出ていることに気づき、幸村は動くのを止めた。
兼続は腕の中、痛みに堪えながら荒く呼吸を繰り返している。
ぽろぽろと涙をこぼしながらも、兼続は頷いた。
広げられたそこはじんじんと痛み続けたが、幸村と繋がり合えた喜びのが強かった。
きゅっと身体を抱き締めると、幸村も包み込むように抱き締め返してくれた。
「幸村…」
「兼続殿、好きです」
重なった胸は互いに鼓動を伝え合った。
幸村の速い鼓動を聞きながら、兼続はうん、と呟き、眸を閉じた。
兼続はふぅと深い溜息を吐いた。
全てではないが、幸村のを受けいれたそこは、未だに鈍く痛む。
動こうとすると、痛みが走った。
ちらりと横を見れば、幸村は寝息を立てて寝ている。
緊張が解れたのか、行為が終わりまどろんでいる内に眠りについた。
兼続は可愛らしい幸村の寝顔を見ながら、くすくすと笑った。先程の漢らしい幸村とは違う、幼い寝顔をしている。
ふわふわとした髪を撫でると、兼続は微笑を浮かべた。
「好きだよ、幸村」
ちゅうっと音を立てて、兼続は幸村の額に口づけを落とした。
終
戻