「晴れそうにない…か」

兼続が天を仰ぎながら、そう呟いた。
その言葉に釣られるように、三成と幸村は天を見た。曇った空は今にも雨が降り出してきてしまいそうだ。

「何かあるのか?」
「今日は七夕だ」

三成がそう訊ねれば、晴れそうにない空を嘆いている理由を聞かされた。
あぁ、と三成は頷くと、再び空を見つめた。これから晴れるとは、どうも思えない。

「雲の上では晴れているだろう」

多分、そうだろうと思ったことを三成は口にした。

「それでは、駄目だ。晴れなくては…駄目なのだ」

きっぱりと兼続は否定する。
そして、天から二人へと目線を落とした。

「どうして…ですか?」

酷く悲しそうな顔に嘆くように幸村は言った。思わず、駆け寄って抱き締めたい衝動に駆られた。
手をきゅうっと握り締めた。

「兼続…」

そんな幸村の横を三成が通り過ぎた。
同じことを思ったのか、三成が兼続に駆け寄ると、その身体を抱き締めた。
幸村も誘われるように兼続に寄る。

「願いたいことがあるからだよ」

右手で三成の身体を抱き締め、左手を幸村に差し出した。
手に触れると、引き寄せられる。
幸村は兼続と三成を包み込むように抱き締めた。

「流石に俺たちでも天の機嫌まではどうしようも出来ぬ」
「そうですね」
「解ってはいる…だが…」

まるで今日が晴れなくては、永遠の別れが来てしまうかのような兼続の言葉に、幸村は一層手に力を入れた。

「まだ、今日は終わっていません。もう少し待ちましょう」

幸村は、僅かに屈むと兼続の頬に口付けた。
うん、と兼続は童のように小さく頷く。

「晴れるといいな」

三成は爪先立って伸び上がると、兼続の額に口付ける。
また、うん、と兼続は小さく頷いた。

三人で縁側で空を見つめた。
まだ、曇り空。

(晴れたら、願おうと決めたことがある…)

兼続は、三成と幸村の顔を交互に見ると、手を強く握った。
永遠などないことは解ってはいる。だが、願いたかった。
二人と共に居たいと。









晴れたらいいな!






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