「貴様は…上杉謙信に抱かれておったのか?」
突然、政宗からそんな言葉が投げられた。
兼続と政宗の二人は、酒を飲んでいた。
二人きりで飲んでいたのは、ほんの気紛れに過ぎない。普段ならば、二人で飲むことなどないだろう。
「そう…でしたら、何だと?」
政宗がことりと盃を置いた。距離が近付く。
少し顔を寄せるだけで口付けられてしまうくらいに近付いた。
兼続は、あからさまに嫌そうに眉を顰めた。
「抱かせろ」
「ふっ…、何を仰るかと思えば…」
兼続も盃を置くと、すくっと立ち上がった。
「私の身体には龍が棲くっております故…貴方様のような方に私が抱けるとは思いませぬな」
くっ、と嘲りを含め、鼻で笑った。
くるりと政宗に背を向ける。
帰りでもするのかと思いきや、着物の帯を解いた。
「所詮、喰われてしまうのが落ち…」
そう言うと、着物を脱いだ。
「……!?」
政宗は兼続の背を見るなり、驚愕した。
龍が其処には居るのだ。
兼続の背に黒々とした姿の龍が描かれていた。
「貴方様の竜がこの龍に勝てるとお思いでしたら、私を抱かれては如何ですか?」
くすくすと笑う声が耳に届く、身体が動く度に背の龍が震えた。
睨み付けるその龍に、政宗は鼻で笑うと、兼続に近付き、その場へと押し倒した。
兼続が熱を感じれば、感じるほど龍は濃く深くなる。
睨み付ける龍に怖気も感じず、政宗は兼続を激しく嬲った。
「っ、ふぅ、んっ…」
政宗は、腰を引いた。
湿った音を立てながら、己のものが兼続の中より抜き出てくる。
奥まで激しく突き立てると、身体の動きに合わせて龍が動く。
兼続の中は酷く熱い。
気を抜けば、その熱にやられてしまいそうになる。
内壁の蠕動が政宗を強く刺激した。
兼続も善がってはいるものの、達するには至らないよう。しかし、兼続より先に達することは出来ない。
達した瞬間に、喰われてしまうような気がしたのだ。兼続の言葉通りに。
「随分と…愛されておったのじゃな」
政宗は、息を吐きながら、そう兼続に捨てた。
男を受け入れ、反る身体。中はぎちぎちと締め付ける。
慣れた身体は大分、愛されてきたのだと解る。
「そんなに…善いか?私の身体は…」
善いというものじゃない。
貪り尽くしたくなるくらいの身体だ。
返事の代わりに兼続の身体を激しく打ち付けた。
揺れる髪。
あの男もこう兼続を抱いたのかと思うと、きりりと胃の辺りが傷んだ。
「ただ…」
兼続が揺れながら言葉を紡いだ。
「愛されるだけ…ならば良かったのだがな…」
「…?」
言葉の意味が汲み取れなかった。
愛されたこと以外の何かがあったのだろうか。
政宗は、兼続が精を吐き出すまで、さんざ嬲った。
目を覚ました政宗は、兼続が髪を梳いているのを見つめていた。
その背には、何もない。
先程見た龍は幻影ではなかったのだろうかと、そんな気すらしてくる。
何もないのだ。墨一つ。
熱を感じれば浮き出る彫りだと気付く。
(まるで心置かれているようじゃな…)
激しい熱に、感情に浮かび上がる墨はあとまで残された心のようだと思った。
そこで気付く。
兼続は縛られているのだと。
心に縛られている。
兼続の言葉の意味を知った。
もう一度、背を見た。
何もない白い肌。
兼続の心の内を見てしまったような気がして、政宗の心が痛んだ。
終
- - - - - - - - - 後記
遅くなりましたが、リクエストありがとうございました。
刺青ものが大好きだなと更新しながら思いました。
好きです。
リクエストありがとうございました。
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