薄墨色の眸


肌をなぞる指先は冷たいのに、なぞられた肌は焼かれたように熱くなる。
そのあまりの熱さに、ふ、と息を吐いた。奥を射抜くような視線に、思わず眩む。
寝かされている布を手の甲で撫ぜれば、白い波が立つ。騒がしい心のようだ。
遊ばせていた手が掴まれ、頬に手を当てられた。僅かに感じる熱。その手の先には謙信公がいらっしゃる。

これからの行為を思い、顔を逸らした。そうするつもりなどないのに、顔が赤らむ。呼吸が荒くなり、身体が熱を持った。
下肢の間が布の下で疼く。
父親に抱かれるというのに、私の身体は厭らしく求める。何と賤しいのだろうか。
そう思っていも、抱かれたいと感じる心。
愛しい、誰よりも愛しい。血の繋がった私の父親。



「あぁ、っ、はっ」

私の身体は初めてだというにも関わらず、意図も簡単に受け入れた。
そう教え込まれているからだ。
長いものが奥を突き刺す感覚に、身体を捻らせた。教え込まれているといえ、やはり道具とは違う。壁を抉る感触に背が仰け反った。快感に身悶える。
熱い。血液が湧き上がるように、身体が燃えるように、熱い。

こうなることを知っていたのだろうか。
私の心だけではなく、謙信公の心も知っていたのだろうか。
あのお方は…。

愚問だな…そう思って、思考を止めた。

「あぁ、あ、あ、あっ」

望んでいたこと。父親に抱かれたいと。
謙信公も望んでいらっしゃった。あの方には何もかもお見通しなのだ。

だからこそ、私をそう育てたのであろう。

「…っ、ふぅ、っ」

水滴に歪んで、謙信公が見えた。
覗く薄墨の色の眸。私の好きな色。

「…ちち…ぅえ……」

手を伸ばすと、その手に優しく手を絡ませた。
抱かれているが、私たちは親子。

それでも私は、この方を……父上を…

「…あい…してます」

同じ眸を見据えて言うと、言葉の代わりに口を塞がれた。
激しく腰が打ちつけられる。

「んっ、んんっ、んっ」

呼吸がままならず苦しくて、それがまた気持ち良かった。
悲しさからではない涙が溢れ、激しく揺らされているので、流れた。悲しさには泣けないのに、気持ち良さには泣けるのか。

落ち行く意識の中、そんなことを思った。



眸を開けば、謙信公が私を見つめていた。
目線が絡むと薄く笑う。

「私の眸の色をどう思われますか?」

訊ねてみた。
私はこの眼を潰してしまいたい。あなたの足枷にはなりたくないと続けた。

「謙信は兼続のその色を好いている……」

言葉に身体が熱くなるのが解った。愛していると言われるよりも嬉しかった。
頬染まるのが解ったのか、謙信公は笑った。ほんの僅か優しく。

あぁ、この方が愛しい。
この想いが罪だとしても、私はこの方を愛せて良かった。

私は、この世に生まれてきて幸せだと、心からそう感じた。








リクエストありがとうございました!親子ものが大好きです。書けて幸せいっぱいでした。
がっつりエロではなかったですね。軽めでした。




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