兼続と幸村が付き合い初めて一年近く。未だに二人は関係を持ったことはなく、軽く触れ合うキスをしあう程度だった。そのキスも兼続からが多く、幸村からは数回程。ぎこちなくなってしまい、果ては歯が当たり兼続の唇を傷付けてしまったこともあってか、どうも幸村は自分からし難かったからだ。

幸村との付き合いには文句はなかった。
だが、やはり幸村からもキスして欲しい。そして、抱いて欲しかった。

「よしっ!」

兼続は鏡の前、白い布を持っていた。身体には何も身に纏っていない。全裸だ。周りには洋服が散らばっている。
この日、幸村の家に兼続は呼ばれた。あの幸村のこと、そんな気はないのかも知れない。だが、兼続は次のステップに幸村と進みたかった。



(幸村の匂いがする…)

幸村の部屋に入ると、そこは幸村の匂いが染み付いていた。当たり前だが、幸村が生活しているのだなと実感する。
きゅ、と胸が騒いだ。

「どうぞ、お好きなところへお座りください」

そう言う幸村をちらりと見れば、迷わずベッドへと座った。
僅か、幸村に動揺が走ったのが解った。
覚悟しては来たものの、やはり兼続も緊張した。幸村は、Vネックの無地のカットソーを着重ね、デニムのパンツを穿いていた。見た事がない服だった。今日の日の為に買って来たのかも知れないと思うと、愛しくて仕方なくなった。抱き付いてしまいたい。
うずうずと小刻みに身体を揺らしながら、まるで得物を狙う猫のように幸村を見た。
幸村はきょろきょろと部屋を見渡していた。座る場所を探しているのだ。恋人同士とは言え、隣に座って良いものなのかと悩んでいる。

「ここにおいで」

兼続は、ベッドの隣をぽんぽんと叩いた。
焦りながらも、失礼しますと告げて幸村は隣に座った。

「そんなに緊張するな、幸村」

そうは言ったものの、自分もそれなりに緊張している。この部屋は幸村の匂いが強く、それだけで子宮が疼く。下肢をしっかりと締めた。気付きはしないだろうが、きっと濡れているのかも知れない。
手が幸村の太腿に触れた。その脚に力が入った。

「幸村…」

置いた手を身体に向かい撫でた。幸村の身体が反応し、震える。

「…幸村は私を抱きたいとは思ってくれないのか」

幸村を見れば、赤面させながら、目線を逸らした。
そんな言葉を話すつもりではなかった。抱かれたいとは思ったが、こう直ぐにでは部屋に来たのも抱かれたいからと思われたのではないかと、不安になる。

「……抱き、たいです」

太腿に乗せた手に手を重ね、握り締めた。
微かに震える手に、どこか安心感を覚えた。

「幸村は、私をはしたない女と思うだろうか…私からこのように…。その…この部屋に来たら…身体が…」

きゅっと膝と膝とを重ね合わせた。幸村の太腿から離そうとした手を掴まれた。幸村の腕の中に抱かれる。
服を着た上からは解り難いが、結構筋肉質だというのが解った。
この身体に抱かれるのかと思うと、ぞくりと震える。

「いえ…そんなことは思いません。私も…兼続さんが来てから……その、匂いが…」

口を手で覆うと、幸村は目線を下へと落とした。真っ赤に染まった幸村の顔。

「抱いてくれるか?」

言葉にはい、と幸村は小さく返事をした。

兼続は髪を留めていたゴムを取ると、服を脱ぎはじめた。
恥ずかしさに目線を逸らせたかったが、幸村は白い肌が表れるのを熱い眼差しで見つめた。

下着姿になると、兼続は手を止めた。
レースのついた純白のブラジャーは、二つの白い膨らみを美しく見せた。すらりと伸びた下肢の元のまだ見知らぬ部分は腰で結わえられたブラジャーと同じ色のショーツで隠されている。
幸村は思わず熱い吐息を吐いた。心臓が煩い。

「幸村も脱いで」
「はい」

慌てて幸村はカットソーを脱いだ。
カチャカチャとベルトを外す、どさりと床に落ちる音がやけに耳に響いた。
ボタンを外すより先に、兼続が手を伸ばした。そこは解るまでに、生地を押していた。下から線をなぞるように兼続の指が撫でた。
うっと頷いて、腰を引いた。

「私で、興奮してくれているのか?」

兼続が猛ったものに、ふぅと歓喜に似た吐息を零した。そして、下から幸村の顔を覗く。

兼続の身体を抱き寄せ、押し倒した。どさりとベッドに二人は倒れ込む。
ほどけた髪に顔を埋めるようにすると、鼻孔に柔らかな香りが強く届く。
頬を擦り寄せると、はいと呟いた。

「脱がせてくれるだろうか…」

腕の中で小さく囁けば、ぎこちない手が下肢にそろりと伸びて来る。
撫でる仕草だけで、兼続は熱を孕む。

愛し合う二人が悦楽に落ちるのは簡単で、貪るように身体を求め合った。





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