ヶ月

「キス…してくれませんか?」

大分、大きくなった腹部を撫でていた氏康に兼続は言った。
どこか濡れた吐息混じりに告げる柔らかな唇に、氏康は目線を向ける。
眼はまるで泣いた後のように潤んでいた。

「兼続、止めねえか…抱きたくなっちまう」

手を大きく振る。だが、兼続は眸を向け、訴える。

「仕方ねえ、かみさんだ」


唇を親指で撫でて、押し付けるように乱暴にキスをした。
乱暴にした割に、舌先はやけに丁寧に兼続の口内入り口を撫でる。

吐息が混ざり合い、愛しい相手の熱を感じた。
胸がきゅうと締め付けられ、苦しい。
唇を話すと、氏康の胸に耳を付けた。鼓動が聞こえる。氏康の少し速い鼓動を聞くのは好きだ。落ち着く。不安な気持ちも一気に吹き飛ぶ。
氏康になら、自分の全てを預けてもいい。自分だけではなく、子の命と二人分も預けても守ってくれると兼続は信じている。何年も一緒にいるから知っていた。氏康が大切なものはしっかりと守るべき男だということを。
そこが惹かれたものひとつ。

兼続は命が宿る腹を優しく撫でた。

「……抱いてください」
「どうした、兼続?」

流石に言葉に驚き、聞けば、頬を染め俯く。妊娠が発覚し、安定期に入った4ヶ月終わり目以降、一言も兼続はそんなことを言ったことがなかったからだ。
氏康も求めてはいない。
もう7ヶ月も兼続を抱いてはいなかった。

「よく…解らないのですが……その…」
「やりてえと」

染まった頬が益々、赤み増す。兼続はひとつ深く頭を下げた。

繋がり、愛し合う悦びを教えられた兼続の身体は、今日はやけに抱かれたいと思った。

「激しくはしないからな」

本来ならば、兼続が言うべき言葉を告げて、氏康は兼続を抱いた。



せめて、愛撫くらいはしっかりしてやろうと思ったのだが、兼続がやけに求めるので、そこそこに氏康は兼続の中に入った。

「…あ、ふっ、あぁ、…い、いいっ…」

中の濡れ具合に、そんなにも欲しかったのかと問い詰めれば、身動いだ。
言葉にそこもひくひくと蠢く。

(意外と勃つもんだな)

挿している部分を見た。
子がいると知っている中に挿入するのは、流石に萎えるだろうと考えていたのだが、何ら変わりない。
腹部に触れれば、手の感触に反応するかのようにぴくりと震える。そう震えても、昂ぶったものはそのまま。

挿入はしたが、氏康は身体を揺らそうとしなかった。舐め濡らした親指で、兼続の感じる膨れた部分を軽く、触れるか触れないか程度に擦った。

「や…ぁ、んっ」

身体が激しく反応し、咥えている部分が、ぐっと締まった。正直な身体は善いと告げている。
あまり強い刺激を与えないように、指で弄った。今日の兼続は自分から求めてくることだけあり、やけに良い反応をした。
箇所は食いちぎらんとせんばかりに締める。

「あっ、あぁっ、あぁ、」

声も大きい。
腹部を突き出すように、兼続は背を反らせながら悦びを言葉にする。

「喘ぎ声で胎教する気か、兼続。普段より感じてんじゃねえか」
「やっ、あっ!」

擦っていた蕾をきゅうと握る。びくっと身体が跳ねた。
反応を見ながら、先ほどよりは強い力でそこを擦る。

「それ、あ、そんな…、あ、ああぁ」

壷を得られた兼続の身体は、指であっさりと達する。下肢を艶めかしく震わし、痙攣を繰り返した。
氏康は腰を僅かに引くと、先端の窪み迄が刺さっているようにし、痙攣と手の扱きを利用し、兼続の中に熱い滾るものを吐き出させた。
その出されたものの熱さと、氏康への愛しさを感じつつ、長い呼吸を繰り返した。



「ほら、早く着ろ」

悦楽の余韻をまったりと裸で抱き合い、味わうこともなく、兼続は服を着させられた。
足りないのか、むぅっと唸った。

「餓鬼が生まれたら、たっぷり可愛がってやるから、今日は我慢しろ」

ここまで色欲を剥き出しにする兼続は珍しく、満足する迄貪ってやりたいが、氏康は堪えた。大切なのだ、兼続も、腹の中の子も。
抱き寄せて、一瞬触れ合うだけのキスを唇にし、次に頬にした。










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