ふわりと香った匂いに、私は思わず足を止めた。

「あぁ、いらっしゃるのですね」

あなたが。

ひとりごとにそう呟いて、息を吸った。
完全に目覚め切っていない早朝の涼やかな空気は、私の肺を満たし、きりりと身を引き締めさせる。
眸を瞑り、思い出す。十数年前のあなたのことを。

私は、あなたの漆黒色の髪を揺らし、微笑む姿が一等好きです。

おそらく、穢れなき純白な心は、尚も痛い迄に美しいままなのでしょうが、あなたはきっと笑っていらっしゃない…。そう思うと、私の心は非道く痛みます。あなたには笑っていて欲しい。あなたが好きですから。
誰よりも、何よりも。
幸せになってもらいたい。
例え、私が……


-存在を今一度、確かめるように槍を握り締めた。
静寂なこの場所もやがては戦場へと変わる。


今日で全てを終わらせますね。
あなたがこの場所に立つのならば、尚更のこと。



「私はあなたの笑う姿が好きでした」









大坂での兼続と幸村がとても好きなんです。別れなのかも知れないですが、それでもそれぞれ違う志の元、立ち並ぶ姿が好きです。






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