情緒
「ふっ、ふっ」
立ったままの慶次の陰茎を兼続は口で愛撫した。
陰茎と言っても先端だけ。慶次のは大きく全てを口に含むことは出来ない。口に含めない部分は唾液で湿らせながら手で扱いた。
ぐちゃりぐちゃりと水音が響いた。
それに興奮してか、兼続が扱いている手と反対の手で己の下肢の間を弄った。やはり興奮していたものを出すと、それも扱く。
「っ、ふっ、ふ、ふぅ」
吐息が増した。
根元を扱きながら、慶次のをくわえる眸は物欲しそうに見えた。
絶頂を迎えそうなのか、兼続の手の動きが増す。それに合わせて、慶次は腰を振った。
「っ!!」
あたたかな口内に発すると同時に、兼続の指の中のものも達した。
ひくひくと震えながら、先端から白いものが溢れてくる。
布団が濡れるのも構わず、残った液体を絞り出すように根から先端へと扱いた。濁ったものがとろとろと溢れる。
「入れてやるよ」
兼続の肩を押せば、躊躇いもなく四つん這いになる。
先程、既に解されていた部分にあてがい、先端だけを差し入れさせた。
空気が入る音がする。
もどかしいからか、兼続が腰をくねらす。
「早く入れてくれないか、慶次」
そして即す。
「せっかちな御仁だねえ」
腰を強く掴むと、身体を寄せた。
「あぁぁぁっ!」
慶次の太いものといえど、貫くと背を反らせながらもすんなりと受け入れる身体。中は濡れ、熱い壁は慶次のを逃さないと食らいついてくる。
慶次はふぅと濃い息を吐いた。
慶次にとって、男との経験は無かった。
専ら抱いていたのは女だ。良い香りのする、柔らかな肌を持った女。
衆道が当たり前な世の中、しかし男を抱きたいとは思わなかった。そう、兼続に逢うまでは。
偶然にも触れた腕は女よりも艶やかで、さらりと流れる珠のような肌をしていた。酒に濡れた唇は赤く、熟れた実のよう。
雰囲気に任せて、問うてみれば簡単に身体を開いた。
(其処まで俺が信用出来る相手ってことかね…いや、この御仁のことだ…)
兼続の熱を感じながらも、思考を巡らせる。
そんなことを考えながら、いやいやと被りを振った。
「ふっ、あ、あぁ」
兼続の肌を撫ぜれば、身体を震わしながら、きゅうと孔を締め付けた。
揺れる髪を見つめながら、顔を見たいと慶次は思った。
「あんたの顔を見ながらやりたい」
そう言えば、兼続は吐息を吐いた後に此方を向いた。
「私の顔を見ても面白いことなんてないぞ」
ずるりと身を震わせながらも慶次の方向を向くと、脚を慶次の太腿に乗せた。脚の色の違いに、こうも同じ人でも違うのかと改めて感じた。
白い脚を掴むと、身体を抱き寄せた。
「くぅっ…」
ずっと入ったものに兼続が身をぶるりと震わせる。顔を逸らすと、指を軽く噛んだ。
ゆっくりと律動を繰り返すと、兼続から吐息が零れる。
それは女よりも甘ったるく慶次に届く。
(何だろうね、この気持ちは…)
優しく肌を撫でながら、ぐっと身体を寄せれば、兼続は啼いた。
「いいっ…あ、あぁ…いい…」
黒い髪が顔を隠すので、それを退けると、行為の悦に濡れた眸があった。
慶次の胸がそれに締め付けられる。
覚えのある、その痛み。
(あぁ、これは惚れちまったってことかい)
心情に気付いて、思わず動きが止まった。
兼続が不思議そうに濡れた眸を向ける。
ただの漢惚れとは違う。心から想う感情だった。
愛しいと思ってしまったのだ。今、抱いている男を。
「奥…突いてくれないか」
兼続は慶次の心になど気付かず、そう慶次に告げた。
腰に手を絡ます。
「本当にせっかちだねえ、あんたは」
兼続の言葉に奥深くを突いた。
「あっ、あぁっ!」
身体に力が籠もる。
きつくそこは慶次のを咥え込んだ。
肌を打ち付ければ、何度もいいと繰り返す。
(こういう時は愛だのなんだのとは言ってくれやしないんだな…)
突きながら思った。
身体をくねらせながら、喘ぐだけだ。
兼続にとって、行為とは友情を深くする為のもの。
慶次とは違う。
兼続に対して、抱きたいと思う心はやはり惚れた心からきていた。
兼続が己のを扱こうと伸ばした手に慶次は手を絡めた。
身を寄せると、口付ける。舌で唇から口内に、兼続の中へと絡ませた。
「んっ、んんっ、ん、んっ」
兼続は空気を求め、唇を離そうとする。
だが、慶次は離さない。
打ちつける腰の動きを速めた。
兼続の身体がより震え、慶次の腹で擦れていたものが濡れたのが解った。中がひくひくと小刻みに震える。
それでも慶次は激しく求め、兼続を離そうとしなかった。
終