兼続は女であったが、二人とする行為は子を成す為のものではなかった。
性交渉ほど、相手を心から信用していると伝える術は無いだろう。
無防備に身体を差し出し、溺れる姿はまるで命を預けているようなもの。この時代において、相手が信用に足りる相手なのかどうかを見極めるのも、己を守る術でもあった。
だが、二人とする行為が好きなのもある。
「はっ、はっ…あ…っ」
後ろから三成に抱き締められ、乳房を揉まれながら、前から幸村に密所を舌で愛撫されている。
兼続だけは足袋以外の全てを脱がされ、肌を露わにしていた。幸村と三成は着物をしっかりと着込んでいた。己だけが全身を曝け出されていることに少なからず恥辱を感じる。その恥辱がまた、半身を湿らせた。
「んっ、…っ…」
幸村は弁を軽く吸うと、間を舌先で突く。その恐ろしくも兼続の淫楽を見事に捉える行為に、ふるふると身を小刻みに震わせた。
胸に伸びる三成の腕を強く握った。
三成は首の出っ張った骨の椎の部分に優しく口付ける。兼続が其方を向けば、唇にも優しく口付けられた。
舌が絡められる。
「んーっ、んっ、ふっ」
三成は眸を開け、兼続が達し、涙で濡れるのを見つめた。
「ふっ…幸村っ!」
兼続は三成から唇を離すと、幸村の頭を押した。
「もういいっ…くすぐったい…」
「あ、そうですか?」
手の甲で口を拭いながら、幸村は兼続の顔を覗いた。兼続は黒髪を揺らしながら、頷く。
それが可愛らしくて口付ける。
兼続は己の雌の匂いに眉を顰めた。その匂いは己が女なんだと改めて自覚させられる。胸がきゅっと騒いだ。
「三成殿からどうぞ」
幸村は兼続の後ろに回ると、三成と場所を変わった。
「何だ、幸村からでいいのに」
「三成殿から」
にっこりと幸村は微笑すると、兼続の両脚を持ち上げた。
「私の身体だぞ」
「後で私も入れてあげますから」
ちぅ、と音を立てて、幸村は兼続の首筋に口付ける。
「うん。三成、入れて良いぞ」
「もっと、色気あるように言えないのか」
「…三成が欲しい……」
指を咥え、濡れた唇で希った。
それに三成の劣情が催される。
俺の心を知り得てるなと思いながらも、ん、と三成は頷くと、兼続の部分にあてがった。
兼続の薄い肌と、そしてその肌に似合う薄い毛の下に、三成のまた白く長い物が中に入っていくのを幸村は見つめた。それを見るのが幸村は好きだった。
三成が身体を押すので己に二人分の体重がかかり、全てを預けられているような気分になる。
己の腕の中で、徐々に入っていく物に身を震わせる兼続が愛しくて、幸村はきゅうと兼続を強く抱き締めた。
「んっ」
根まで埋めると、ふぅと三成は息を吐いた。
湿りと温かさ、そして襞の締め付けに、挿入しただけで達しそうになる。
兼続を見れば、形の良い胸を揺らしながら顔を紅潮させ、眸を潤ませながら、三成を見つめている。まるで早く動けと催促されているような気分になった。
「……ふん」
胸を乱暴に揉めば、喘ぎながら、下を締め付けてくる。
そんな姿も可愛らしいとは思うが、幸村のように平気で口には出来ない。
「貴様は淫乱だな」
ぷくっと膨れた乳房の先端を摘むと、びくんと身体と中が震えた。
「…失礼だぞ、三成!私は淫乱ではない!!」
「このように濡らしてか?」
中は潤うではなく、濡れに濡れている。
粗相をしてしまったかのように、伝い流れる雫。
「うっ…」
「三成殿、兼続殿は淫乱などではなく、厭らしいのです」
「幸村、それはどう違うのだ…」
話している最中でも、出し入れを始めれば、兼続から甘ったるい吐息が零れる。
「こら…三成……訂正しろ…ふ…ふっ…ぎ…あっ、や、…ん…きもちいいっ……」
兼続は貪るようにそこを締め付けてくる。三成のが一番気持ち良い箇所に届くように身体が僅かに浮かせた。
「やはり淫乱だな」
そういうと兼続の脚を肩にかけ、深く挿入すると、腰を激しく打ち付けた。三成の着物が肌を撫でる。それすら、気持ち良さを感じて身体が反応しまう。戦慄めいて腰が動く。下腹部が疼いた。
「ちがっ…う、っ…や、…やだっ…」
三成は数度腰を打ち付けると、中で果てた。
とくとくと奥に熱いものが流し込まれる感覚に、兼続の身体が震えた。
「…ふぁっ、み、三成!!中には出さぬ約束ではないか!」
直ぐに抜こうとするが、三成はがっちりと脚を掴み離そうとしない。
そして、背には幸村がいる。動けない。
熱いものはじわりと身体の中に染みていくように思えた。
三成や幸村と最初に性交渉をするときに約束したことがあった。それは中には出さないこと。
兼続は二人のことは愛していたが、子を成すつもりはなかった。二人のことをどちらも同じくらい愛しているからもあるが、他にもいくつかの理由はあった。
「子が出来たら、俺たちが育ててやろう」
言葉に兼続よりも、幸村が反応した。びくりと胸が動いたので、兼続は幸村の顔を下から覗いた。
「幸村は子が欲しいのか?」
「う、え…いや、…どうなんでしょうか?」
「幸村、兼続に中出しして、孕ませてやりたいと言ってやれ」
「幸村!!」
「そ、そんなことは…」
幸村は、兼続から視線を逸らせた。
「思っているのか」
ふっと三成は鼻で笑う。
「幸村!!」
「か、兼続殿!男たるもの…やはり、惚れた相手の子は欲しいと思うのです…」
顔を染めながら、幸村は兼続の顔を見つめた。 思わず釣られて、兼続の顔も染まる。
そんな二人を見て、三成の顔まで赤くなった。
「うん、そうか…」
兼続は幸村に口付け、次に三成に口付けた。
「しかし、中出しは不義だ!」
「兼続!その流れなら『子が出来たなら、生んでやろう…ふふっ』だろ!!」
「なんだそれは!子を生むのは痛いと言うではないか!!」
「痛いのは好きだろう!」
「男子ならば死んでしまう痛みと言う、そこまで痛いのはいらぬ!」
「兼続殿、痛いのが好きは否定されないのですね…」
幸村の言葉に兼続は、うむと頷く。
「それに…っ…あ、まだ…と、ちゅ…ん、あぁ、ん…」
三成は煩いとばかりに、半ば中で萎えがちになりつつあった物を出し入れさせた。
それは中で膨張を始め、何時もとは違った刺激を兼続に与える。
動かす度に中に出されたものが、溢れてきた。
「何だ、兼続。続きはないのか?」
すっかりと膨張しきったそれで三成は兼続を責めに責めた。呼吸が乱れる。
出し入れする度に聞こえる滑る淫靡な音に恥ずかしさを感じた。
ゆっくりと押し込まれたかと思えば、素早く引き抜く。まるで違う刺激に身体をくねらせた。
頭が何も考えられなくなり、快感だけが支配していく。
「んっ、や、い…える…わけ…ん、あっ、あぁ、あー」
喘ぎ始めた兼続の胸を幸村はやや遠慮がちに触れた。手で包み込むように触り、親指の腹で起っている部分を軽く擦る。
「あっ、ん…あ…っ」
兼続はあまりに良い反応をするので、幸村は執拗にそこを責めた。
「く、ぅ…うっ…あぁっ、ん」
小さな息を吐いて、兼続は身体を震わせた。
中が伸縮を繰り返す。それに三成は誘導され、また中で達した。
ふるっと兼続の身体か震えた。
「三成…」
キッと兼続は三成を睨み付けた。
「仕方ないだろう、兼続が達したから俺も達してしまったまでだ」
完全なまでに居直っている三成に兼続は不義だと叫ぶ。
ずるりと抜いた白いものは、白い粘膜が泡立ちまとわりついていた。
「そうだとしてもだな…」
中から溢れてくる白濁の液体を見る。
口で言うほど、嫌ではない。逆に何処か嬉しさがある。何とも言い難い。
(やはり、惚れているからだろうか…子か…どちらかの子…)
三成と幸村の顔を交互に見た。自分との子を想像してみるも浮かばない。
「怒っているのか?」
三成が兼続の行動にそう聞いてきた。
眉を顰めていたので、怒っているのだと思った。兼続はただ、二人との間に子が生まれたらどんな顔になるのだろうかと考えていた。全く浮かばないので、無意識の内に眉を顰めてしまっていたらしい。
「ん?そんなには怒ってない」
反省している三成の頬を口吸うと、やんわりと笑う。
そして、幸村の方を見ると、身体を其方に向けた。
「幸村、おいで」
動くと白濁の液体が垂れる。幸村はそれを見ると、身を屈めた。
垂れてくる部分に唇で口付けた。
「…っ」
兼続の中を吸うように舌を這わせる。
かと思いきや、身を起こすと、兼続の唇に何かを吐き出させた。独特な味は精液だと直ぐに気付く。
思わず飲んでしまった液体は喉に残り、絡み付いてくる。
舌を絡め合い、三成の精液を互いの中で味わった。水音が鼓膜を震わす。
精液と唾液が混ざり合ったものが兼続の唇から零れていく。
「やめろ、お前たち」
見ていた三成は顔を赤らめた。どうも己の吐き出したものを伝え合うのを見ているのは恥ずかしさがあった。
ましてや二人は、それをあまりに嬉しそうにしているので余計にだ。
「ははっ、照れるな三成」
「普通に照れるだろ。幸村もよくそんなことが出来るな…」
「兼続殿も好きですが、三成殿のことも好きですから」
にこりと微笑する幸村。三成は照れるも、誤魔化す為にふんっと鼻で笑った。
しかし、耳まで赤い三成に二人はくすっと笑い合った。
「何が可笑しい!」
「い、いえ…」
「耳まで赤いぞ、三成」
「煩い!」
余計に赤く染まる。
空気を払うように手で空を撫ぜた。
「さっさと終わらせろ!」
「そんな片手間ですることではないだろ」
「三成殿は可愛らしいですね」
「幸村!」
「可愛らしい三成は放っておいて、私たちもしようか幸村」
「そうしろ」
兼続はくすりと笑うと、幸村を抱き寄せて、額に軽く口付けた。
ほんの少し雰囲気を出しただけで、幸村のは下帯を持ち上げるまでに猛る。帯が取れ、はだけた着物の間からそれが見えた。
三成のとは違うそれに身体がきゅっと反応するのが解った。
濡れている上に三成のが出されたそこは意図も簡単に幸村を受け入れる。
「っあ…っ、あ、あっ…」
深く咥え込まれた物は中の粘膜を擦る。
幸村はゆっくりと腰を引いた。
「っあぁ…!」
奥へと重い突きを受ける。ぐちっと言う音が聞こえた。ぞくぞくと背筋までが震える。
浅く、深く、挿入され、内側から甘く蕩けた。
「あ、っ…あぁ…」
夢中になり腰が動いてしまう。兼続の身体は深い快感を求めて仕方ない。自ら乳房を揉んだ。きゅっと起った先端を摘めば、可笑しい位に快感を感じた。ぐぐっと脚が持ち上がる。もっと奥深くを突いて欲しいと幸村を求めた。
「っ、あっ、あぁぁっ!!」
「っ…」
奥まで突き上げられ、兼続は達した。それと同時に幸村も白濁液を吐き出させた。
「つ…中に…」
目尻を濡らしながら、兼続は幸村を睨んだ。
幸村は小さくすみませんと謝ると、その目尻に口付けた。
「子が出来たらどうすると言うのだ」
兼続がぶつぶつとそんなことを言うと、幸村と三成は兼続を見つめ、同時に口を開いた。
「責任はとるぞ」
「責任とりますから!」
言った後に、ん?と二人は顔を見返した。
あまりにも息が合っていて、思わず兼続は吹き出した。
「ははははっ、何も二人で共に言わなくとも」
「思っていたことだ」
「常に思っていることですからっ!!」
「あはははは」
また同時。
兼続は腹を抱えた。
一頻り笑った後、二人の顔を交互に見つめた。
(三成と幸村…父親にするならどちらがいいのだろうな)
終
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