「…幸村」

すっ、と襖が開き、幸村の名を呼んだ。書物を読んでいた幸村は、手を止めると其方を見た。謙信が襖の間から顔を覗かせて居る。
謙信が直接、幸村を呼ぶ用など一つ。謙信は名を呼んだだけであったが、幸村には何を言いたいのかを即座に理解した。

「用意したら参ります」

そう返事を聞くと、謙信は薄く目を細めた。

幸村が上杉へと人質として来た時、謙信は一つだけ課したことがあった。

それは…

「参りました」
「入れ」

幸村が襖を開けば、艶めかしいまでに白い身体が目に入る。最早、着ていないに等しい着物より覗く肌は微かに汗で濡れていた。それが、また色を艶やかに魅せた。
その肌の持ち主は兼続である。
謙信に後ろから抱き締められ、身体を預けていた。

「や、あ…あぁ、あ」

見つめていた幸村は、声に慌てて部屋に入ると襖を閉めた。
謙信の腕が動く度に、兼続の口からは吐息が零れ、くちゃりくちゃりと音が聞こえてくる。

幸村が入ってくるなり、謙信は手の動きを速めた。増す声、増す音。
そして、形の良い、柔らげな乳房が揺れる。

幸村が兼続の脚の方向へと向かった。
脚の間では、謙信の指が兼続を中を責めていた。
長い指が中を激しく出入りしているのが見える。粘着質な液体は泡立ち、溢れてきていた。
指が抜かれる度に、赤い襞が見えた。
その赤さに、幸村の身体が疼く。下帯を外せば、見ていただけにも関わらず天へと持ち上がる其れ。
兼続を見つめれば、涙に濡れ、思わずぞくりと身体が震えるほどに快感に溺れきった顔をしていた。

幸村は、上杉に来た時、謙信に言われた。
己に代わり、兼続の相手をせよと。謙信は不犯を誓った身。女である兼続を抱くことは出来ない。
兼続は謙信の側に置く為に女の身でありながら、男として育てられてきた。
しかし、男と女。二人は心より繋がり合った。だが、身体は繋がり合うことは出来ない。そこで、謙信は幸村に兼続の相手をさせることにした。道具となんら代わりは無い。
謙信に呼ばれれば、幸村は兼続を抱く。
兼続を抱くことは嫌では無かった。寧ろ、喜ばしいこと。女人との交渉は今まで経験無かったが、兼続の身体は具合良く、一度抱いただけで忘れられぬものになった。

「あぁ、あ、あ、あ」

兼続は絶頂に登り詰める寸前だった。ぎゅうっと謙信の指を締め付ける。
やや乱暴に謙信は四本の指で責め立てたかと思えば、其処を指で広げた。

「突け」

謙信の言葉に、幸村は猛に猛った物を広げられた孔へと突き刺した。

「あああっ!」

奥まで突き上げられた挿入感と共に兼続は達した。
だが、幸村は激しく責めるのを止めなかった。

「ああ、あ、あ―」

そこは小刻みに痙攣を繰り返し、幸村のを締め付ける。
肌の当たり合う音と共に、厭らしい水音が聞こえた。
零れた涙が黒い髪を伝う。涙は顎から零れ落ちると、乳房を濡らした。







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