(※現パロ)
「慶次は…子供欲しいか?」
「へ?」
急に言われた言葉に慶次は素っ頓狂な声を出した。
行為を終え、使ったものを捨てた後に兼続はそんなことを言い出した。
「どうした、兼続?」
「んー…」
兼続の首に手を回すと、慶次は自分の胸に押し付けた。
「私が子供を生めたら良かったのにな」
そう言う兼続の頬を、慶次はむにっと掴んだ。
「何をする、慶次!」
「なぁ、兼続。俺が惚れているのは兼続なんだ」
「…うん」
こくりと頷くと、言葉を続けた。
「慶次ほどの男が子孫も残さずにいるなんて勿体ないではないか。きっと慶次の子ならば、可愛い子が生まれるであろう!その方が慶次にとっては幸せなのではないか?」
兼続はぐっと握りこぶしを作った。
「ぶっ」
思わず慶次は噴出した。
ははははと腹を抱えて笑う慶次に、兼続はむぅと膨れた。
「本気で言っているのだぞ!」
「悪かった、悪かった。へぇ、そんなことを考えていたなんてな」
がしがしと乱暴に兼続を撫でたかと思えば、背へと手を移し、そこをぽんぽんと叩いた。
「何も子を持つ事が幸せってわけでもないさ。俺はあんたと世界が見たいよ」
慶次はぽつぽつと行きたい場所を兼続に告げた。
日本だけではなく、広く続く世界の果ても。
「それらを兼続と見てみたいのさ」
そして兼続の言葉でその感動を聞きたい。
慶次はにこりと笑った。
「きっと、喧嘩もたくさんしちまうだろう。」
「直ぐに仲直りしれくれるか?」
「当たり前だ」
兼続は頷いた。
「俺はあんたとそうやって生きていたいんだ」
年を取ったら縁側で二人、見た風景思い出してさ。
思い出語り合うのもいいんじゃねぇか?
そう言う慶次の顔はとても幸せそうだった。
兼続はそれに目を細めた。
「幸せは此処にあるんだよ」
慶次はぐいっと兼続を胸に押し付ける。
「俺は兼続とそうやって生きれると思うだけで幸せだ」
兼続は慶次の胸の中、こくんと頷いた。
生きていこう。泣いて、怒って、悲しんで、笑って、それが人間の幸せってもんだろう。
慶次が話すと胸が上下する。
生きてる鼓動に胸がつまった。
たくさんある好きなものの中で、一番が慶次。
その慶次の幸せは此処にあるのだと思うと、兼続は何故か涙が込み上げてきた。
幸せとは何だろう。
そう思って探すと解らないものなのかも知れないが、春になると生まれる植物の息吹と同じに必ずそれは訪れる。
夜が来ても、朝が来るのと同じように。
「たくさんの菜の花が見たい」
兼続はそう言った。
黄色に咲き乱れる菜の花の中で笑う慶次の姿が兼続には容易に想像出来る。
幸せそうな慶次の姿にまた、自分も幸せそうに笑うのだろう。
「明日行くか」
バイク飛ばして二人で行こう。
二人で見る景色はきっと美しい。
一人で見る景色よりもずっと、ずっと。
それは美しいだろう。
終