「くー」

自分の膝の上に頭を預け、熟睡している男の顔を兼続はじっくりと見つめた。
長い睫。ふわふわな髪。整った唇。
可愛い寝顔。

(年上の方に、可愛いと思うのは失礼だろうか)

兼続は起こさないように、元就の毛先を指で撫でた。
ふわふわとした毛はまるで動物のようだった。

(…気持ちいい)

柔らかな髪は指に心地よい刺激を、心に安らぎを運ぶ。
あと少し、あと少しと思いながらも、兼続は髪を撫でた。

「君は撫でられるより、撫でるほうが好きなのかな?」

静かに話す元就の声が耳に届く。
声にはっとして元就を見れば、二つの目はしっかりと開けられていた。
思わず、ぱっと手を離した。

「すみません」
「いいや?謝ることはないよ。気持ち良かった。だが、不思議な気持ちでもある。この年で、早々誰かに撫でられることはないからね」

兼続の手を取ると、元就は頭に置いた。
撫でてと催促。
兼続は、また髪を撫でた。
それは、とても優しい。

「子を褒める母のようだ」
「私は母親ですか?」
「それとも、動物と飼い主かな?」
「こんなに大きなペットを飼ったつもりはありません…」

言葉を聞くと、元就は撫でていると反対の手を取った。
ちゅっと指先に唇をつける。

「君になら飼われてもいいよ」

指に舌を這わすと、兼続の身体がぴくりと震えた。
指の間へと舌を運んでいく。

「悪い子は躾しないと、ほら」

そう言いながらも元就は止めようとはしない。
ねっとりと指を愛撫する。兼続は舌が艶かしく動くのを制することが出来なかった。
そんな様子を見ながら、くすくすとからかうように笑うと、舌を指から離した。
起き上がり、兼続の頬に触れる。
顔を見れば、真っ赤に染まっていた。

「意地悪な方ですね」
「それでも君は私が好きでしょうがない」
「…はい」

あなたには敵いませんよと呟くと、兼続は元就からのキスを貰う。
髪の感触よりも、唇は気持ち良くて、兼続はもう一度いいですかとねだった。

「私のことを好きって言ってくれたらね」

言葉に元就の顔を見ると、元就はにこりと微笑む。

「……好きです」
「もっと言ってくれないか」
「好きです」
「もっと」
「好きです…好き」
「私も好きだよ」

そう言うと、どさっと兼続をその場へ倒した。
強引にキスを落とす。

「結構、強引なんですね」
「知らなかったかい」
「はい」
「もっと、私のことを教えてあげるよ」

そう言うと、またキスをした。深く、熱く、絡まりあうようなキス。
兼続の頭の中は真っ白になっていった。









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後記

縁側でごろごろしている二人がすっごく好きなので、いつもそんな話を書いてしまいます。もう、大好きなんです。





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