しゅっ、しゅっとヤスリで削る音が聞こえる。
孫市は手に持っているものを角度を変えては見つめ、そしてヤスリをかける。
兼続はその様子をじぃっと観察していた。
孫市がしているのはプラモデルの組み立て。
しかも、相当なこだわりがあるのか、何時間もかけそれを形にしていた。
飽きもせず、ひたすら真剣に。
それを見つめる目はまるで子供のように輝いている。
兼続はくすくすと笑った。
「なんだ、兼続?」
孫市はプラモデルからちらりと兼続に目線を移した。
「いや、孫市にそんな趣味があるとは知らなかった」
「男だったら憧れるもんだぜ?宇宙戦艦、ロボット。あの煌めく宇宙へ旅立ちたいと思うもんだ。だが、まだ実際には無いからな。これで我慢してるってわけよ。あぁ、これもなかなか面白いぜ。兼続も作ってみるか?」
「私には本のが性にあっている」
「だよなー」
「それにしても、意外とロマンチストだな、孫市は」
「まあね」
鼻歌を口ずさみながら、またプラモデルへと目線を戻した。
「……」
首を傾げると、孫市はプラモデルを机に置いた。
「兼続、今から俺と銀河への宇宙旅行しちゃう?」
ばきゅーんと手で銃を撃つマネをする。
「ははは、なんだそれは」
「これ」
ぱちっと部屋の電気を孫市は消した。
すると現れる銀河。
部屋が宇宙の中のようにたくさんの星々が姿を見せた。
家庭用のプラネタリウム。
「やっぱり、孫市はロマンチストだな」
「雰囲気は大切だろ?」
「まぁ・・・な」
くすくすと笑うと、兼続はちゅっと孫市にキスをした。
孫市もキスを返すと、兼続をその場に押し倒した。
孫市の向こう、夜空が輝く。
二人で宇宙に投げ出されたようだった。
「いつもより、孫市が格好良く見える」
「俺はいつでも格好良いんだって」
「ははは、すまない。そうだな」
見続けていると、広がる宇宙に兼続はくらくらした。
(本当に孫市はロマンチストだな…)
終