「朝は、目玉焼きとトーストとコーヒー」
まるで歌うようにそう言いながら、兼続はこんこんとフライパンの縁で卵を割った。
まんまるな黄身の卵があつあつのフライパンへと滑り込む。じゅうううと、良い音を立てて焼けていった。
水を加えると、蓋をする。
「両面ほくほくの、ターンオーバー」
好みのことは直ぐに覚えた。
好きだから。
喜ぶ顔が見たいから。
「コーヒーは、コナ」
豆から挽くと、良い香りが充満した。
ごりごりと音と立て、粉になっていく豆。
横では、ちん、という音。パンが焼けたのを知らせる。
それにプラスの新鮮なレタスのサラダ。トマトもたっぷり。
テーブルに並べると、素敵な朝食となる。
外を見れば、太陽もさんさんと輝く。素敵な一日の始まり。
にっこりと兼続は笑った。
「氏康さん、ご飯出来ましたよ?」
大切な日課。
モーニングコール。
「んー?」
寝ぼけた顔を見るのはまだ慣れない。
未だにどきりと心臓が騒ぐ。
「おはよう」
「おはようございます」
必ずする、朝のキス。
そして、直ぐに香る煙草のにおい。
褒めてくれるだろうか。
今日の朝食は何点満点だろうか。
考えるだけで、顔が緩んでしまう。
二人向かい合って、テーブルに着く。
両手を合わせていただきます。
兼続はちらりと氏康を見た。
「今日の朝食はどうですか?」
終