「面白いか?」
清正は兼続を後ろから抱き締めたまま、聞いた。
兼続は先程から本に夢中だ。
「うん」
「ふ〜ん」
綺麗に並んだ文字の列。
並び立てられている言葉もまた綺麗で、清正は思わず目を背けたくなった。
「こら、清正」
ごそごそと服の中に手を入れようとすると、押さえつけられた。
それでも強引に身体を触った。
「あったかいな、兼続は」
「清正のがあたたかいよ」
ぱたんと本を閉じると、清正の方向を向く。
身体を抱き締めると、ぎゅっと強く抱き締める。
「兼続、あつい」
「嬉しいのだろう」
心臓が速いぞと兼続はそこに耳をあてる。
そこは嘘はつけない。速い鼓動に兼続は嬉しくなった。
「その顔止めろ」
「ん?」
「こっちが恥ずかしくなる」
満面という言葉がぴったりの笑顔。
清正は顔を赤くしながら顔を背けた。
「素直じゃないな、清正は」
「おまえは素直すぎる」
「まぁ」
「そこが好きなんだけどな」
言葉を切りながら、清正はそう言った。
「今日はやけに素直だな」
「おまえに中てられた」
驚いた顔をする兼続の額をこんと指で突いた。
そして、笑う。
その笑顔に兼続の中に熱い何かが込み上げて、ぱんと弾ける。
弾けた何かは、あつい熱をじわじわと胸いっぱいにした。
「おまえはホント、見ていて飽きねえな」
抱き締めて、苦笑した。
それでも何だか清正は嬉しそうだった。
終