三成と兼続は二人、他愛のない会話を続けていた。
だが、そんな二人の目の前に居た、清正と正則は呆れていた。
何かというと、三成と兼続の二人は会話を終えるたびに、ちゅっとキスをしているからだ。
一言話すたびにちゅっと落とし、相手の言葉を待つ。
言葉のキャッチボールと共に、キスが投げられる。
二人にしては、なんともないことだったが、傍から見ている清正と正則にとっては堪らない。
「おい、あいつら止めて来い」
「無理だって、ふっつーに無理だって」
「迷惑にもほどがある」
「馬鹿ップルっつーか、ここまで行くと、ただの馬鹿二人?」
「確かにな」
はぁっと清正は深い溜息を吐いた。
「兼続」
「三成ー」
そんな清正と正則の言葉も三成と兼続の耳には入っていない。
二人で同じような笑顔。
ただ、見詰め合っているだけで悦びが込み上げてくる。
それの意味はよく解らなかった。
「でも、幸せそうでいいなー」
正則の言葉で気付く。
幸せだから、笑顔になるのだと。
その「幸せ」という言葉はあまりにも甘酸っぱく、三成にはむず痒く感じた。
「幸せそうでいいなだと」
三成がそう言えば、兼続がにこりと笑う。
「素晴らしいことではないか」
私たちの愛は素晴らしいものだよと兼続は言った。
三成は兼続がそう言うのなら、そうなのだろうと頷いた。
「だったら、幸せになればいい」
兼続は正則にそう言った。
「そんな簡単なもんじゃねぇっつーの」
「そうか?簡単だろう?」
「そうだって、あーもう、うっせぇ!馬鹿ップル!馬鹿!ばーか!」
「餓鬼か、正則」
思わず清正が割り込んできた。
「だってよ、清正ぁ」
それを見ながら、思わず三成は笑った。
ははははと声を上げて。
「なんだよ、三成」
「どうした、三成?」
「気でも狂ったか?馬鹿」
涙まで浮かべながら三成は笑った。
落ち着くまで大分時間がかかった。
こんなに腹の底から笑うなんて幼い頃から無かったような気がする。
兼続をちらっと見つめた。
「いや、ただ…」
三成の言った言葉に思わず、三人は赤面した。
「ば、馬鹿じゃねえの」
「三成…ふふっ」
「馬鹿」
返ってきた言葉に三成は目を細め、笑った。
終