ぱちん

ぱちん

将棋盤の上で駒が行き来する。
相手の手を読み、駒を動かす。
謙信と兼続は二人向き合い、将棋をしていた。

ひとつの駒を強めに碁盤に叩くと、兼続は顔を謙信に向けた。
そして、満面の笑みを浮かべる。

「私の勝ちですね」

見れば詰んでしまっていた。
謙信は顎を撫でた。

「兼続…」

ふっと微笑みを浮かべると、兼続の顎を上げ、謙信はキスをした。
やけに長いキスを。
くちびるが開放され、盤面を見れば駒の位置が変わっていた。
それも謙信に有利な方向に。

「謙信様!弄りましたね!」
「知らぬ」
「知らないではありません!あからさまに変わっているじゃないですか」
「謙信は知らぬ」
「謙信様!」
「…兼続」

ついっと人差し指だけで顎を上げられ、またキスをする。

「んっ、んん…」

今度は短い。だが、濃厚。

「だ、騙されませんからね」

兼続がそう言ったとき、にゃぁと鳴き声が聞こえた。
猫?と思ったときには遅かった。

「あああ」

猫は碁盤の上に乗り、暴れた挙句謙信の膝にぽとんと座り込んだ。

「やり直し、だな、兼続」

猫は謙信の膝の上で撫でられ、ごろごろと喉を鳴らしている。
まるで仕込んであったかのようだった。

「次も勝ちますからね」
「先のは無効だ」

ぱちん

また、碁盤に駒が行き来する。
隣では猫がにゃああと鳴きながら、畳に落ちた駒に戯れていた。









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後記

少し意地悪な謙信公もいいのでは?と考えた御礼SSです。





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