「兼続、此処へ」

謙信はそう兼続を呼ぶと、膝を叩いた。

「座れということでしょうか?」

訊ねれば、頭を乗せて横になれと言われた。
素直に従いそうする。

上を見れば、謙信の顎が見える。
謙信が下を向いて、柔らかに笑った。
手が伸びてきた。
白いものを持っている。

唇にぷにっとその白いものを当てられた。
ゆっくりと口を開けば、口の中へと入ってくるショコラ。
甘い。
それに混じる、僅かな甘酸っぱさはストロベリー。

徐々にとけていく。

じっと横になったまま、兼続は謙信を見つめた。
また、ひとつ口の中。
甘い、そして甘酸っぱい。
恋みたいに。

兼続が食べる姿を謙信はじっと見据えた。
美味しいですと言えば、口角を僅かに上げる。

「こんな姿を見られたら、怒られてしまいそうですね」

あまりにも謙信は愛しく微笑むので、兼続は頬を赤らめながら、そう言った。

「姉上にか…」

謙信は小さく笑った。

食べさせる手と反対の手が兼続の髪を撫でた。
さらさらと指を撫でる黒い髪。
その髪を退かせると、謙信は屈んだ。
頬にキスを落とす。

「謙信様、キスする場所が違います」

兼続は起き上がった。
こつんと、額を謙信の額に合わせた。

「では、何処に?」
「此方にです」

そう言い、唇にキスをする。
柔らかに触れた唇は熱を持っていた。
甘い兼続の舌が、謙信の舌に触れる。
吐息が混ざり合った。

「甘い…」

そう呟けば、兼続は笑った。

「恋の味ですね」

そう言いながら。

「兼続との恋は、甘くとろけると?」
「はい…」

にこりと笑うと、兼続はまた謙信にキスをした。
濃厚なキスを交し合った。









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後記

謙信公がこのチョコレートを買いに行った姿を想像すると滾るものがあります。





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