使者


「ふ〜ん」

兼続が持ってきた書状を見ながら、煙管の煙をぷかりと吐いた。
その書状には次の戦の援護をして欲しい旨が書いてあった。それに続く報酬。

「ま、そちらさんの言い分は解ったよ」
「では、この件を」
「その前にだ」

氏康は兼続の言葉を区切るようにそういい捨てた。

「これだけじゃあ、飲めねぇなあ」

ぱしんぱしんと書状を甲で叩いた。

「他に何をお望みでしょうか?」
「そうだな…」

兼続をまるで舐めるように見た。

「あんたが俺を満足させてくれるんだったら考えてやってもいい」
「何を!」

兼続は、立ち上がりかけた。

「じゃあ聞くが、何であんたが来た?」
「そ、それは…」

本来ならば、上級の者の書状は相手方に知己のある使者が持ってくるはずだ。
だが、知己でもない兼続が、わざわざ氏康のところまで書状を持ってきた。
急いていたのもあったが、兼続は何としても、身体を張ってでも、この案を氏康に飲んでもらう必要があった。上杉のこれからがかかっている。他の者に任せることなど出来なかった。
文面は誘いとも取れる柔らかな書かれ方ではあるが、戦は相当厳しいものなのであり、上杉もこの案に大分賭けている部分があるのだろう。
氏康は其れを見抜き、先に言った。

目を瞑り、一つ深い溜息を吐くと解りましたと氏康を見つめた。

氏康は煙管を置き、立ち上がると、兼続の前で止まった。
傍にどかりと座り込む。
着衣を脱ぐと、下帯から己の物を出す。
兼続は、出された見慣れぬ形に、ごくりと喉を鳴らした。
だらりと下がった其れに上半身を屈め、唇を付ける。
口付ければ、即座にぴくりと反応し、二、三度と繰り返せば驚愕するまでに膨張した。
銜えながらも器用に己の着衣を脱いだ。下帯までするりと外す。

「若いだけはあるな」

氏康は既に猛っている兼続の物を見るなり、そう言った。
屈辱に耐えるように、兼続は眉を顰めた。

ある程度、氏康の物を舌で愛撫し、濡らすと一度唇を離した。
己の左、人差し指と中指を唾液で湿らせた。
尻を高く上げると、間に指を押し入れる。
わざと乱暴に中を解した。

「ふぅっ、ふっ…」

氏康の陰茎の間から、吐息を吐く。
指二本を巧みに使い、其処を氏康のが入りそうなくらいに解すと指を抜き、唇も陰茎を解放する。
荒く呼吸を繰り返しながら、立ち上がると氏康に跨がった。
上から一度、見下すように見つめると、身体を降ろした。
充てがい、一気に根まで入れた。

ずるっと中をこすれる快感に身体が仰け反った。 そして、がくりと氏康の身体に倒れかかってしまいそうになるのに耐えた。
中は、ぐっと食いちぎらんとせんばかりに締まる。
それがまた氏康に良い快楽を導いた。

「なかなか、悪くない」

ふぅと息を吐きながら氏康はそう言った。

兼続は尻を動かし、氏康を刺激する。
抜く時に開き、入れる時に締まる。無意識の中ではあったが、兼続はそう刺激を生んだ。

「っ、あ…あっ、…ふ」

氏康のは経験してきたものとは違う快感を生む。
そのあまりにも強すぎる刺激に、腰を動かすのもままならない。

「仕方ねぇな」

ふぅと一つ溜息を吐くと、どんっと兼続の身体を押した。
入っていた陰茎がずるりと抜け、兼続の身体は畳に倒れた。

「はぁっ、はっ、っ…はぁ」

激しく胸を上下させる兼続の足を掴むと、ぐいっと引く。反動でうつ伏せになった。

「ほらっ、尻あげろ」

ばしんと氏康は兼続の臀部を激しく叩いた。
うっ、と小さく唸ると、ゆるゆると言われたままに上げる。
氏康は開いた其処に先端の部分だけを入れると、其処だけで擦った。直ぐに兼続は嬌声を発する。

暫くそう刺激した後、不意を打ち一気に埋めた。

「あぁああっ!!!」

背が反り、奥の感じる部分を思いっきり突かれた刺激で、兼続は達した。
ぽたぽたりと液が畳に零れた。

「他人様の家の畳を汚すんじゃねえよ」

そう吐くと、兼続の身体を引く。
吐き出した精液が己の顔の下にある。じわじわと畳に染み始めていた。

詫びるより先に、氏康は舐め取れと言った。
声には嘲りが含まれているのが解った。
ぎりっと一度、歯を食いしばると畳に舌を這わせた。
水を飲む猫のように、精液を舌で舐める。喉に絡む其れは、取れない骨をつっかえさせたようであった。爪が食い込むほど、兼続は手を握りしめた。

氏康が果てるまで、兼続は耐えた。
達することは許されていないのに、氏康は兼続の壺を敢えて責め立てた。

「あ…あぁ、あ…あっ…っ」

一層激しく突かれたかと思えば、中で爆ぜた感覚があった。
安堵と途方もない愉悦と共に、兼続は身を崩した。
だが、氏康はまだ許しを解かない。

「中に出されたもんを一滴でも零したら、今回の件はねえ」

にやりと笑いながら、兼続にそう言う。

「尻の孔、キツく締めて帰んな」

くるりと振り返ると、ひらひらと手を振った。
もう消えろということだ。

兼続は着物を着込んだ。ほんの僅か動くだけで、零れてしまいそうになる。下半身に力を込めた。

(だが…これで上杉は…)

握り締めていた手には赤い爪痕がついていた。
じわじわと痛む。

煙管を吹かしながら、此方を見据えている氏康の前に正座すると、深く頭を垂れた。









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後記

こういう状況下なら、氏康×兼続もありえるのではないか!?と書いた勢いな話です。
氏兼だと、ハードなものもありなんじゃないかなーと勝手に思っています。






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