乱曲


戦を終えた、慶次・兼続・政宗・孫市の四人は幸村の勧めもあり、上田城で一晩泊まらせてもらうことにした。
五人は酒を飲み交わし、談笑し合った。
宵も更けてくると、それぞれ宛がわれた部屋で就寝した。


随分と夜も更けた頃、政宗は城の中をうろついていた。戦で猛った体は眠らせてくれず、未だに興奮している。

「何をしておる」

一つの部屋の前に孫市と幸村がいた。
どうやら、その部屋を覗いているらしい。
幸村は政宗に気付くと、気まずそうに目線を反らした。

孫市が政宗の方向を向くと、しー、と人差し指を口の前に当てた。
話すなと言っているらしい。

「何か部屋の中にあるのか?」
「其れがまた、凄いんだって…」

ひそひそと声を潜めて二人は話す。

(何があるんじゃ?)

部屋を覗けば、兼続と慶次が居た。眼が慣れず、中の様子はまだよく解らない。だが、僅かに見える身体の様子はその二人のもの。
ゆらゆらと揺れ動く炎が重なり合う二つの影をその先の壁に写している。
其処の部屋は兼続に宛てられた部屋だったはずだとぼんやり思っていると、兼続の声が聞こえた。

其れは最早、悲鳴に近い嬌声の声。

そして、ばしーん、ばしーんと叩くような音が響き、聞こえた。
闇に慣れた眼が、徐々に状況をこと細かに伝える。

両の手を後ろに掴まれ、反り返る身体。
兼続の双丘の間に差し込まれている太いものが、ずるっと引かれては、激しく入る。
臀部と腰が当たる度に、激しく鳴る音。
音が鳴る度に兼続の髪は激しく揺れ、口からは悲痛な悲鳴が上がる。
しかし、口からは悲鳴が零れているのに、兼続の前についているものは反り立ち、己の腹についている。
其処から白濁の液がとろとろと零れていた。何度か達したのだと解る。

「な、何を……」

思わず、政宗は声を上げてしまった。

「ば、馬鹿!」

孫市が続けてそう言う。

「見たいなら、こっちに来てみたらどうだい?」

慶次がそう声を発した。
ぱっと、兼続の掴んでいた両の手を離すと、どさりと崩れるように兼続は臀部を高くあげたまま、布団へと倒れこんだ。


慶次はぐっ、ぐっと押し付けるように腰を動かした。奥まで入れては、抜けるぎりぎりまで引く。
入れる動作の度に、兼続は、はぁっ、と荒く呼吸した。
そんな様子を幸村と孫市は息荒げに見つめている。政宗だけがうんざりした様子であった。

「おっ、ちょっと待ってな。…兼続、達してもいいぜ?」

動きを速めると、小さく唸り兼続は達した。
身体がおかしくなってしまったのではないかと思える程、がくがくと痙攣する。
僅かに浮いた下半身の下で、兼続のものが震えていたかと思えば、ごく少量の精液が伝った。
兼続が達したというのに、慶次は腰の動きを止めず、会話を続けた。

「いやぁな、戦が案外あっさりと片付いちまったもんだからさ、身体が猛ってどうしようもねえんだよ。だから、兼続を抱かせてもらってるってことさ。な、兼続?」

そう身体の下の兼続に声を掛けると、それに反応し、あぁと吐息と共に吐いた。

「あんた達もそうなんだろ?猛って寝れない。兼続抱くかい?あんた達も…」

当の本人である兼続は、その言葉に乱れた髪の間から、ちらりと幸村たちを見ただけで何も言わなかった。ごくっと、幸村と孫市が咽喉を鳴らした。

「わしは、いい」

其の空気を壊すように、政宗は言った。
だが、部屋を出るわけでもなく、その場にどっかりと座り込む。

「そうかい。幸村と孫市は?」
「私は・・・」
「俺は抱かせてもらおっかな?」

ずいっと孫市が前へ出た。

「ちょっと待ってな」

そう言うと、慶次はぐいぐいと身体を激しく振った。
ふ、ふ、と荒く呼吸したかと思えば、ぶるると震え、兼続の中に怒涛を注ぎ込む。あぁっと小さく兼続の声が零れた。
その声の艶やかさに幸村の身体がふるっと震えた。

ずるっと長く太い其れを抜くと、兼続の口からふーと長い息が吐かれた。
慶次のものを収めていた其処はぽっかりと孔が開き、黒い中を見せていた。

「お前のが入ってたんなら、大分緩くなっちまってんじゃねえの?」
「いや、兼続のは締まるから大丈夫だぜ」

そんな会話を二人ですると、孫市は衣服を脱いだ。
既に猛った其れが姿を現す。
そのまま、兼続の孔へと其れを挿入させた。

きゅっと身体が強張り、はぁっと大きな呼吸が一つ。

「確かに、締まんなー」

開いた孔は既に孫市のものをぎゅっと締め付ける。
孫市は本能のままに腰を振った。腰の動きに合わせ、慶次の時とは違った喘ぎ方をする。
其れがまた、孫市の情欲をそそった。

「幸村は?」

少し離れた場所に座った慶次がそう幸村に声を掛けた。

「わ、私は…」

あからさまに葛藤しているようだった。だが、良心を拭い去ることが出来ない。

孫市が兼続の耳に何かを伝えた。
すっと、兼続は顔を上げると、幸村の方向へ眼を流した。

「ゆき、むら…」

びくっと幸村の身体が震えた。

「おいで…」

言葉に誘われるように、幸村が兼続の前に座った。
孫市に揺さぶられ、小さく喘ぐ兼続を見つめた。

「兼続殿は…気持ちよいのですか?」

そう訊けば、兼続の腕がにゅっと伸びてきた。
首に絡む。
頬に口付けて、そのまま撓垂れるようにするりと身体を撫でながら、唇を
首筋へ、胸へと流した。

「善いよ…」

吐息を深く吐きながら一言そう言うと、幸村の下帯を剥いだ。若く勇ましい其れが覗く。
ちゅと其処へも口付けると、居ても立ってもいられないように其れを口に含んだ。

「っ…」

幸村は兼続の舌の温かさに身悶えた。小さくはっ、はっ、と呼吸を繰り返す。
その下では孫市が揺さぶる。

(あのように男どもに抱かれて、何も言わぬとは…)

政宗は犯されてる兼続を見ながらそう思った。
達した孫市に代わり、今度は幸村の上へと身を乗せている兼続を軽蔑するかのように。

「なぁ、俺のも入りそうじゃねえ?」
「か、兼続殿が壊れてしまいます!!」
「慶次のが入るんだから、大丈夫だって」

そんな会話が政宗の耳に入る。そして、悲鳴のような兼続の声。
其処までされても兼続は拒むことなく、受け入れる。
政宗には信じられなかった。

「あんたは、兼続が信じられねえって顔してんな?」
「そりゃ、そうじゃ。あの様に男に抱かれて…あいつらの家臣でも、貴様の家臣でもないのに、ああまで言われるがまま尽くす必要は無いじゃろ。それにしても、何故あのようなことを言った?」

ぎろっと政宗は慶次を睨んだ。

「貴様は兼続を愛うておるのじゃろ?猛った身体を治める為とは言え、何故、他の男にも抱くかと訊く?理解出来ん。わしが貴様なら、他の男に抱かれ、あのように淫らに乱れる姿を見ていたら腸が煮えくり返りそうになるわ!今も不快で仕方ない!!」

政宗は眉間に皺を寄せた。

「俺は見たいし、見せ付けたいぜ?」
「はぁ?」

政宗の肩に慶次は腕を乗せた。

「他人から責められて善がる姿も中々そそる。見せ付けるのも、俺はこんだけ兼続を善がらせることが出来るんだぞってな」

今は幸村に正常位で責められている兼続を指差すと、ははっと笑った。
それだけ、己に自信もあるのだろう。

「兼続を想ってない奴になら言わねえ。知ってるからこそ、ああ言ったまでさ」

ちらっと政宗は幸村と孫市を見た。
確かに、この二人が兼続を想っているのは知っていた。幸村など傍から見ていて、恥ずかしくなるほど。

「わしは、其れでも抱かん。貴様達の前でなんぞな」

慶次の手を払い除けた。

「何だ、政宗は自信がねえの?一物にさ〜」
「なっ!!」

話を聞いていた孫市が此方に来ると、からかうようにそう言った。
はっはっーと慶次がそれを訊き大声で笑う。

「そんなわけがあるか!!馬鹿め!!わしのはデカいわ!」
「どれどれ?」
「貴様ら、やめろ!!」

政宗を脱がせようとした二人を手と足で払い除けた。

兼続に目線を戻せば、幸村との行為が終わったようで、腕を顔の上に乗せ、荒く胸を上下させている。

「はぁ…は、はぁ・・・みず…はぁ…」

それを聞いた孫市が、政宗に「飲ませてこいよ」と水差しを渡した。
渋々、水差しを受け取ると、兼続の傍に寄った。
半分見開かれた眸は虚ろで、何処を見ているのかも解らない。苦しそうに荒く呼吸を繰り返す。
身体はどこもかしこも誰のだか解らない精液に塗れ、兼続を濡らしている。
幸村をちらりと見つめた。幸村はしてしまった行為に反省しているのか、ちょこんと壁に向かって正座している。

ふんと鼻で笑うと、兼続に目線を戻した。少し上から政宗は水を口に流し込んだ。
ちょろちょろと流れる水は、唇に触れると、兼続の喉へと注がれる。

「ん、ん…ん、」

小さく喉を鳴らしながら、兼続は其れを飲んだ。
己が注いだものを飲んでいるという行為を、暫し眺めた後、政宗は口を開いた。

「わしも抱く」

着物を脱ぎ捨てた。
下半身の滾ったものを見るなり、孫市がひゅ〜と口笛を吹いた。
煩いと其方を睨む。

だらりと力ない兼続の腕を己の肩に回すと、兼続の脚の間に己の身体を入れた。

(こんなに虚ろで…もう、抱くのが誰かも解らないのではないか?)

今の兼続を見、政宗はそう思った。

「兼続…」

そっと名を呼んでみた。他の誰にも聞こえない声で。

「…まさむね・…」

きゅっと背に回っている手に力が籠った。
濡れに濡れた兼続の髪をかき上げ、頬を撫でる。
虚ろだった眸が、政宗を映す。
政宗は優しく口付けると、兼続を抱いた。


「昨晩はあんなことをしてしまいましたが、兼続殿は大丈夫でしょうか?」
「今日は立てないんじゃね?」
「あぁ、兼続殿!!」

幸村は嘆きながら、握り締めた両手を天へと掲げた。

(あんだけしといて、何を今更…)

そんな幸村を目を細めながら、孫市は見た。

「兼続ー、生きてるか?」

がらりと障子を開けると、其処には平然と帰り支度をしている兼続の姿があった。
あれだけのことをされたにも関わらず、普段の兼続となんら変わりない。

「私が生きているのは知ってるだろ?何を言っている?」

きょとんと兼続が孫市を見た。

「腰とか大丈夫なのか?」
「多少、痛む程度だな。まぁ、何ともないに等しい」

孫市は口に手をやった。

(こいつ、すげぇ…)

そう思いながら。

「慶次ー、帰るぞ!」

そう言いながら兼続が外を見れば、既に松風に跨って待っている慶次の姿。
おーっと声が返ってきた。

「またな、二人とも」

そう言うと、ぽんと外へと飛んだ。

「此処、二階です!!」

二人が走り、兼続が飛んだ箇所へと行くと、慶次の背にしがみ付き此方に手を振っているのが見えた。

「あいつは化け物か…」

松風が走り去るのをぽかんと見ながら、孫市が呟いた。








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