「俺には?」
兼続に逢うなり、清正はそう言うと手を出す。
「?」
「三成にあげたのだろ?チョコレート。俺のも寄越せ」
「・・・・」
ぺしっと持っていた市販の板チョコを投げつける。
「たまたま持っていた物だ。くれてやろう」
「これは正則の分か?」
ひらひらと板チョコを振った。
「確かに三成には渡したが、何故ゆえにお前たちに渡さねばならない?」
「何って?決まっている。俺がお前を好きだからだ」
「は?」
ぐいっと手を上へと引かれる兼続。
反対の手で腰を引かれ、身体を寄せられる。
「チョコがないと言うなら・・・・」
ぐいっと腰を寄せ付けられ、キスされる。
「ん・・・・っ!!」
拒もうと、ぶんっと顔に向かい手を振るが、避けられその手は虚しく空を切る。
清正は手をぱっと離すと、兼続の顔を見つめた。
「まだまだ序の口ってところだが?」
キスをした自分の唇を指で触れ、にやりと笑う。
カッと兼続の顔が朱色に染まった。
「返せっ!!」
「何を?」
「私のっ・・・・」
ふうんと顎を撫でる清正。
「厭だな。それとも何か?もっと喰われたい、とか・・・?」
「不義だ!!」
「上等」
「三成ー!!」
すぱーんと障子を開ける兼続。
「私のファーストキスが奪われた!!」
それを聞き、ぶーとお茶を噴出す三成。
三成の目の前に居た正則は、熱いお茶を顔全体で受け止めてしまう。
「あちちちちち、三成!てめー!!熱い茶なんて吐き出すんじゃねえよ!!」
「か、兼続なんて言った?」
正則の話など、てんで三成の耳には入っていない。
「んだよ、無視か!」
「奪われたのだよ・・・・」
兼続はぎゅっと服の裾を掴んだ。
「誰にだ!?幸村か?前田慶次か?それとも他の輩か?」
「加藤清正だ!」
「オイ、マジかよ・・・!清正、何してんだよ!!」
驚愕する正則と、ふるふると怒りに震える三成。
(殺してやる・・・!!)
ぶんっと三成の手から湯のみが飛ばされた。
障子を破ると外へ転がる。
「ん?何だ?喧嘩か?やるのか?俺もやってやるぜー」
正則は指先でリーゼントを撫でた。
「清正には消えてもらう!」
だだだだと走り去る三成。
「うおおおお!何だか解らねえが、俺も行くぜ!!」
面白そうなので、ついでについていく正則。
「・・・・・・」
一人取り残された兼続。
唇を指でなぞる。
唇を撫で、こちらを見ていた清正の顔を思い出す。
「触れた場所が・・・熱い・・・・」
目線を外へと移すと、転がっている湯飲みを見つめた。
終