すっと、障子の開く音がし、謙信は目を覚ました。
「おはようございます」
目線を横へと移せば、部屋に入ってきた兼続が傍らに座るところであった。
座ったときに生まれた風が甘い香りを運んだ。
兼続の手首を引くと、兼続の身体を近付けさせた。
すんすんと髪の匂いを嗅いだ。
チョコレートの匂いがする。
「手作りのものを作っていたので、匂いが移ってしまったのかも知れませんね」
兼続はそう言った。
口からも甘い香りがする。
謙信は兼続にキスをした。口内に舌をするりと入れると、兼続の舌に触れた。
「ん、…んんっ、んっ…」
濃厚に舌を絡ませ合うと、唇を離した。
「・・・・甘味」
まだ痺れるような甘さが謙信の舌先に残っている。
甘いキスと、チョコートの甘さが蕩け合う。
「味を確かめましたから…」
吐息を吐きながら兼続はそう言った。
謙信はちらりと時計を見た。
「遅刻は駄目ですよ」
諭すように兼続は言った。
ふっと、謙信は笑うと、兼続の胸元に触れた。キスだけで、心音は高鳴り煩い。
遅刻を駄目と口では言ってはいるが、顔も身体もそれ以上を望んでいる。
謙信は再び、兼続にキスをした。
今度は時間をかけてゆっくりと、そして先ほど以上に濃厚に、舌に感じるチョコレートよりも甘く。
ぐっと、兼続は謙信の胸元を押し、唇を離した。
「は…は、・・・はぁ・・・」
荒く呼吸をすると、ぎゅっと胸元の服を掴み、眸を伏せた。
「駄目です・・・・これ以上は・・・・」
「何故?」
問えば、僅かに潤む眸で見つめてきた。
ゆっくりと口を開く。
「私が蕩けてしまいます」
謙信が言葉に微笑を浮かべた。
「この謙信の腕の中で、蕩けるがいい…」
時間が、と呟けば、置いてあった置き時計をぱたりと倒した。
終