筆
三成はまだ新品の筆を見つめた。先端は白く、まだ使われていない。
糊で固められていた其の先を指で潰すように解した。
筆を持った手を前に伸ばす。
筆の先には、兼続が居た。兼続は、三成の部屋にあった書物に没頭している。
立ち上がると兼続の背後に立った。
つい、と筆先で兼続の首筋を撫でる。
「わっ!」
身体が大きく震えたかと思えば、前のめりに倒れた。書物がばさっ、と畳に落ちる。
「な、…」
突然の事に未だ何が起こったのか解らず、首筋を押さえ振り返る。三成が真新しい筆を持っていたのに気付く。それで、撫でられたのだと解った。
目線が合った三成は、にたりと笑った。
「弱いのか?」
そう聞けば、兼続の身体がぞくりと震えた。
「…それだけは厭だ」
哀願するが、三成は聞こうとしない。
兼続の腕を掴むと、その反対の手でつうぅぅと筆で背を撫でた。
「ん、あぁ、ぅ…」
聞いたこともない声が口から漏れた。
筆を拒もうと、背が猫が伸びをするように反る。
三成にとっては楽しくて仕方なかった。兼続はそうではなかったが。
行動が段々、段階的に激化していった。
衣服の上からでこうなのだから、直接肌を撫でればどうなるのだろうかと、三成の中で興味が沸いた。
着物をやや無理やりに剥ぎ、肌を撫でる。
小さく、大きく、激しく、優しく。まるで文字でも書くかのように。
兼続は筆が身体を撫でる度に、うー、うーと呻り身悶えた。
「やめてくれ…三成…」
再び懇願し、兼続が此方を見た。
目尻は涙に濡れ、顔は紅潮している。肌は、なぞった跡が赤くなっていた。まるで、赤い紐で身体を縛ったかのようだった。
ぷつっと三成の中で何かが切れた。
腰を掴むと、天井を向かせた。
下肢の間に己の身体押し入れると、衣服を全て剥ぎ、両の手をキツく縛り上げる。
「三成、三成…みつなり…」
切なげに兼続がなく。
言えば言うだけ、三成の手が進んだ。鎖骨の窪みに筆を這わす。力を強くすれば、其処は赤く染まった。
兼続は、はぁ、はぁと荒く呼吸し、身体をくねらせる。
筋肉の流れをなぞるように進むと、胸にある小さな突起を筆先で刺激した。
「やっ!」
思わず高い声が出てしまい、口を抑えた。
三成は強く弾いた。鈍い痛みと、快感が駆け巡る。
「痛いのが感じるのか?」
馬鹿にしたように三成が言う。ちらりと下半身を見た。下帯のが膨らんでいるのが解った。
足でそれを隠すようにするが、すぐさま三成に開かされた。
下帯を外すと、跳ねるように屹立したものが姿を表す。
「あっ、あぁ、あっ」
其れにも筆を這わせた。裏を撫で、先端、根元へと移動させる。
兼続はの身体は味わったこともない感覚に熱く、じんじんと痺れた。
先端の穴の中に筆の先を入れ、弄った。中を筆で刺激を与える。
「やめろ、三成!…みつなり…やめ…、ああっ!!」
ほんの僅か弄っただけで、兼続は達した。筆に精液が染み込んだ。
「筆が汚れてしまったな」
放った精が染み込んだ筆で、兼続の胸に文字を書いた。とろとろと流れるものも、まるで墨に漬けるかのように掬い、続きを書き連ねる。
外の景色を詠んだ詩をさらさらと綴った。
迸りを吐き出した身体は、その動きがくすぐったくて仕方なかった。悶えた。だが、直ぐに愉楽に変わる。
劣情に身体が痙攣を起こした。
「は、あっ、んん、ぁ…」
文字が書かれる度に兼続は身悶え、荒く息を吐いた。
終
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