想ひ


「謙信公…」

愛しくて仕方がないと想いながら、名を紡ぐ。
目の前で白い着物に身を包み、横たわる謙信の頬に触れた。
白い肌はより青白く、冷たい身体はより冷たくなっている。その冷たさはまるで雪にでも触れているかのようだった。
柔らかな肌の下は、まるで鉛でも入ってるのではないかと思える位、固くなっている。
見開かれた眸には光なく、ただ其処に埋め込まれているだけだった。

謙信の魂が現を離れて、約半刻ほど。
最後を看取った兼続は、直ぐに家臣を呼ぶことはしなかった。

胸に頬を付けた。冷たさが肌を刺す。心の臓は音を発することはもう、ない。

謙信は今際の際、一度眸を開いた。兼続を探すと、名を呼び、満足そうに微笑を浮かべた。それは見間違えたかと思う位、ほんの一瞬であった。
ふ、と溜息を吐くと、此の世での生を終えた。
あれほど、愉悦を感じていた戦への心残りを悔やむのではなく、兼続を想い逝った。

思っていたより、悲しみはなかった。
実感が湧かないのもあるからかも知れない。落ち着いた頃、嵐のように其れは襲ってくるのであろう。
だが、今は悲しみよりも欲情が身を焦がしていた。

ふるっと、欲望が身体を震わせる。
散り逝く間際より、身体が疼いてどうしようもない。

謙信公の下半身へと手を伸ばした。
硬直している身体は其処をも固くさせている。
堪えきれず、下帯だけ取り、謙信に跨がると、濡れもしていない中へと挿入させた。

「あぁあっ!!」

冷たい其れは今まで感じていたのとは違う快感を生んだ。
中へと入ってきた感覚だけで、兼続は達した。はたはたと己のを伝い、涙のように精液が流れる。
其れは、ぽたりぽたりと謙信の肌に落ちた。









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