ふくらみ


「私はそう思うのです」
「いや、それはだな…」

幸村と三成は討議を繰り広げていた。
こうして時折、互いの考えを伝え合うことがあった。
本来ならそこに兼続の姿もあるのだが、今はない。

「遅いですね、兼続殿」
「約束を忘れる奴ではないはずだが…」

そんな事を言っていると、バタバタと誰かが走ってくる音が聞こえた。

「来たか」
「来ましたね」
「三成!幸村!!」

襖が勢いよく開き、息を切らせた兼続が入ってきた。
だが、何やら様子がおかしい。

「私は女人になってしまった!!」

口を開くなり出てきた言葉に、三成はあからさまに怪訝そうな顔をした。
馬鹿めと、何処の誰かと同じような言葉が口から出そうになった。

「背が低くなりましたか?」

何時もと変わらぬ口調で幸村がそう言った。

「は?」

言われて見てみれば、確かに背が低くなっている。
182は確実にない。

「身体も全体的に丸みを帯びた感じですね…。そうですか、兼続殿は女子になられてしまったのですか…」
「そうだ。これを見てくれ」

二人のやり取りに三成は呆然とした。
さも当たり前の事のように幸村は話を続けている。俺は間違っているのだろうかと頭を抱えたくなった。

「・・・乳房ですね」
「うむ、やはりこれはそうなるのか」

言葉にはっと我に返った三成は、二人を見た。
兼続は、サラシで押さえつけていた膨らんだ胸を露わにし、幸村に見せているところであった。
待て待て待てと三成がそれに割り入る。

「もしや、下半身も・・・」
「あぁ、すっかりなくなっている」

三成と幸村はごくっと唾を飲んだ。

「見せてみろ」
「三成は女人の下半身の部分を見たことがあるのか?」

見たことはなかったが、とりあえず頷いておいた。

「私は見たことがないので、解らない。だから、本当に私が女人になってしまったかどうかを見て欲しい」

二人は黙って頷く。
兼続もこくりと頷くと、するすると下帯の紐を解いた。
薄く柔らかそうな毛の下にあるべきモノがなかった。

「横になってくれないか?立ったままではよく解らん」
「あ、蒲団持ってきます!」

三成の言葉に即座に幸村が動いた。
てきぱきと動くと、蒲団を敷く。

「さぁ、横になれ兼続」

ころんと兼続は蒲団の上に横たわると、そろそろと脚を開いた。
二人は脚と脚の間の部分をじっと凝視する。

「女人だな」
「そうですね」

ひそひそと二人は相談し合った。

「兼続、まず話がある」

三成が突然、改まってそんなことを言い始めた。
兼続は起き上がると、ちょこんと蒲団の上に正座をした。

「兼続は女人になってしまっている」
「やはり、そうか…乳房が膨らんできてしまった時、そうではないかと思った」

兼続は寂しそうに俯いた。

「そこでだ」

三成は兼続の手を握った。

「俺と兄弟ではなく、婚姻の関係を結ぼうではないか。兼続が女人なのに、『兄弟』というのはおかしいからな」
「あー!!」

三成の言葉に幸村が叫んだ。

「ずるいではありませんか!!」
「俺は兼続のを見てしまった責任があるのだよ!それは果たさねばならない!!」
「でしたら、私にもあります!!」

三成と幸村は言い合いを始めた。
やいのやいのと兼続関係なしに言い合っている。

「三成では駄目だ!」

兼続の叫んだ言葉に、三成は何故だと叫び返した。

「幸村でないと駄目だ。幸村は次男だからな」

兼続は家を断滅させることはしたくない。そして、直江家には他に子がいなかった。つまり、兼続が女になってしまった今、婿をとらなくてはならないのだった。

あからさまに喜ぶ男と、あからさまに絶望している男。

「くっ、しかし兼続の処女は渡さん!!」

ぐいっと兼続の脚を三成は引張った。ごろんと兼続は蒲団に転がる。

「うーん、二人とした事があるのに処女になるのか…」

兼続は緊張感も何もないことを口にした。

「三成殿には、あげません!!」

兼続の腕を引くと、幸村は抱き締めた。
柔らかな胸が己の胸に当たる。
思わず、前屈みになりそうだった。

幸村の腕が緩んだ隙に、三成も兼続の腕を引いた。
三成の腕に抱かれる。

(身体が縮んだせいで、三成の腕の中にすっぽりと入ってしまう…)

何だかそれが新鮮に思えた。

「まぁ、待て。三成、幸村。私の処女だ。私が決めようでないか」

二人を座らせると、兼続はその前でちょこんと正座する。

「ど、ち、ら、に、し、よ、う、か、な。て、ん、の、か、み…」

言葉を言いながら、一文字ごとに三成と幸村を指した。
己で決めようといいつつ、そんな決め方でいいのだろうかと二人は思う。

「ば、ん、ば、ん、ば、ん。む、幸村だな」

幸村はその場で片足を立てると、手をぐっと握りしめた。
その横で絶望に打ちひしがれる男、三成。

「まぁ、幸村は私の夫になるべき男だからな」
「夫になれないのなら、処女は俺に寄越せ。これでは不義だと思わないか?」
「う…」

不義という言葉に兼続は反応した。

「どうなんだ、兼続?」
「う…うぅ…」

三成は兼続を責めた。

「三成殿」

幸村はにっこりと笑うと、兼続をさっと三成の前から退かした。

「此方は私が戴きますが、此方ではどうでしょうか?」

兼続を三成に背を向けさせると、膨らんだ二つの山の間を指差した。

「其方は既に…」
「女人になってからは初めてですよ。それに…(二本挿しというのが出来ます)」

最後を三成だけに聞こえるように、耳打ちした。

「解った。それで手を打とう」

三成は首を傾げ、緩んでしまう口元をさっと手で隠した。

「ん?どうした?納得して貰えたのか?」
「勿論だ」

意味が解っていない兼続と不敵な笑みを浮かべる二人。
解り合ってもらえて良かったと兼続は安堵した。
この後、兼続は己の身にあんなことが起こるとは想像もしていなかった。








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