ブログ | ナノ

11/10(Tue):【ヤンデレ龍アリ】9

っ、ひっ!
引きつったような悲鳴が短く響いた。
少し前までは助けを求めるように伸ばされた手だったが、今は力なくシーツの上に落ている。
瞳は、虚ろに景色を映して、時折はらりと涙を溢れさせていた。
殆ど反応を返さないアリババの事を気にした様子もなく、オルバ達は好き勝手にアリババの体を弄ぶ。
ひっ、あ……。
腰を掴まれたまま、奥まで打ち付けられて、アリババの背が仰け反る。
強く掴まれているからか、アリババの腰にはうっすらと手と同じ形の痣が付きはじめていた。
それを気にするような様子もなく、無言で苛立ちをぶつけるようにアリババに熱を打ちつけられる。
あ!、っあ!
短い悲鳴が、上がる。
首には、青い痣のようなものが出来ていた。
痛々しい痕は、簡単に薄れるようなものでは無い事は誰でも分かっただろう。
まるで前の事が無くなったように、オルバ達はアリババを傷付ける事に躊躇いがなくなった。
爪を立てられて一瞬、アリババは痛みに顔を顰める。
プツリと皮膚が破られる感触がして、じわりとアリババの皮膚に血が滲んだ。
アリババさん、
腰をがっちりと掴んだまま、オルバはぼそりと呟く。
その声に反応して、僅かにアリババは視線を自分を見下ろしているオルバに向けた。
加虐心と苛立ちを隠そうともしない瞳で、ただ、アリババは見つめる。
何か言ってくださいよ。

扉の前に立つ。
開いて、そうして入ってしまえばどうなるか分からない。
分からないが、それでもわずかに意識が残っていたら、やる事は決まっていた。
どうにかして、あの人をこの檻から連れ出さなければいけない。
こんな所で、こんな扱いをされるような人ではないのだ。
日の光を浴びて、笑ってる姿が一番似合う。
だから早く、ここから連れ出さないといけない。
そのためには、あの人にまた会う必要があった。
どんな目を向けられるのか、どんな言葉を掛けられるのか、それを考えるだけで足元が崩れるような不安に駆られる。
けれど、仮にあの人からどんな目を向けられても、助けないといけない。
だって俺は、俺達はあの人に救われたんだ。
あの人のお蔭で、俺達は、世界を憎まずに済んだ。
こうして、この世界で生きる希望を得る事が出来た。
前に進む力を与えてくれた。
どうしようもない俺たちを、救ってくれたのは、あの人だけだった。
その恩は、必ず、返さなくてはいけない。
たとえこの命に代えても一生掛けても、返さないといけない恩だ。
……違う、そう言う義務感じゃない、俺達はあの人を救いたい、ただ、それだけだ。
そのためだったらなんだってする。
例え、その原因を作った相手の命令だって従ってやろうじゃないか。
それにその命令を、無視する事はできない。
無視をすればどんな事が起きるのか想像に難くない。
あれは、目的の為なら手段を選ばないような人間だ。
だからこそ、自分たちが大切な相手を傷付けるかもしれないと言う事を分かっていて、その扉と向き合う。
きっと、そうしなければ、あの人はもっと酷い目に遭ってしまう。
あいつは、きっとあの人をもっと傷つけようとするだろう。
もっと酷い方法で、心を抉る様に、そうして、あの人をボロボロして、そしてきっと自分のモノにしようとするだろう。
それだけは、絶対に許せなかった。
何とかして、あの人を救い出さなければいけない。
あの人の心がこれ以上すり減る前に、傷つく前に、あいつの手の内から救いだなければならない。
全員が、覚悟を決めたのを確認して、オルバは扉に手を掛ける。
ゆっくりと、重々しい音を立てて、扉が開かれた。
それと同時にすぐさま視界に入る様に誂えていた寝台が、オルバ達の視界に飛び込んでくる。
寝台の上に居た、琥珀色をその視界に捉えた。
目と目が合う。
そして、思考が歪んだ。


………も、……ゆる、して………
掠れた声で震える唇をアリババは動かした。何度この辱めから開放されることを懇願したかわからない。身体はオルバ達の怒り、憤り、苛立ち、ありとあらゆる憎悪のままに穿たれ、犯され続けていた。
陽はいつの間にか沈みいつ明けるともわからない夜の間、アリババは眠りにつくことも許されずに熱い楔に穿たれていた。少しでも意識を失えば頬を叩かれ尿道を犯す想像を絶する痛みを与えられるのだ。目が覚めれば痛みからは開放されるが待っているのは終わりの見えない陵辱。皮肉にも白龍と過ごした穏やかな日々がアリババの体力を回復させ、以前よりも意識の持続を促していた。
澱んだ悪意がアリババの身体だけでなく意識すらも絡めとる。悲痛な思いで言葉を紡ぐアリババをオルバは冷たい視線で眺めていた。
痛みを与え続ければ意識は混濁としていく。快楽を与えられ続けても同じだった。アリババが意識を刻んだまま罰を与え続けるにはどうしたらいいか。暗くなった部屋の中でアリババを穿ちながらオルバは考える。
意識が朦朧とした中で罰を与えたとしてもそれでは罰としての効果は薄いのだ。マドーラの命を、ゴミ屑のように奪った罪はこの程度の罰では消えはしないのだから。
苦しいですか?
アリババは涙を溢れさせながら頷く。ぼんやりと反応の薄かった瞳に戻ってきた意志の色にオルバは言葉を続けた。アリババの心がここに戻ってくるように。
痛いですか?
頷く。
気持ちいいですか?
首を振る。
素直じゃないですね。
ひぁっあっ!…ァッ!
奥を穿つだけの動きをかえて、アリババの善い所を軽く何度も擦り上げる。それだけでアリババは嬌声を上げ身を捩らせ、快楽に喘いだ。そんな自分の身体に絶望するように、琥珀の瞳から涙が溢れる。
気持ちいいですか?
同じく問い掛ける。今度は頷いた。けれども。
……も、イきたく……な、い………
震える声で訴えてくる。限度を過ぎる快楽にアリババは苦しんでいた。
そして、最後の問だ。
終わって、欲しいですか?
解放を望んでいる事をわかりながらオルバは問い掛ける。アリババが頷くのを確認してから、オルバは口元を歪めた。

ズルリと楔が抜かれて、痛い程に掴まれていた腰からも手が離された。
………は…………はっ………
突然解放されて寝台にアリババの身体が深く沈む。その眼はただ自分を見下ろすオルバを見上げていた。
そのオルバは顔を横に向けて近くで休んでいた仲間に声をかけた。
俺達の出番はまだ先だったんじゃねーの?
それこそ軽口を叩きながら集まってくる。アリババは寝台の上で指一つ動かすこともできずにただ自分の寝台の近くに集まったオルバ達の顔を見上げていた。
アリババさん、俺達の名前。言えますか。
じっと四対の視線が息も絶え絶えに震え汚れたアリババに注がれる。なんの意味をもってオルバがそんな事を言い出したのかわからないまま、アリババは頷く。
名前。言ってみてください。
……オルバ……ブロル……ヨーン………アーロン………
名前を呼びながらアリババは涙を流した。どうしてこんな風に、こんな関係に。誰もがアリババに憎悪を向けて犯した。こんな関係に、どうしてなってしまったのか。
そうですね。俺達の名前と顔。ちゃんとわかってますね。それじゃゲームをしましょう。
………ゲーム……?
何を、言っているのか。
目を隠して誰が犯しているか、それを当ててください。当たりならすぐに抜きます。外れならこっちが抜けるまで続ける。五回連続で誰かを当てられれば終わりにしてさしあげます。
な、に……言って、………
オルバは一体何を言っているのか。
へぇ、面白そうじゃん。布探してくるわ。
誰かが布を探しに行く。アリババの返事など誰も聞かなかった。ただ、気が狂ったような狂宴が再び始まりを迎えた。

どうしてアリババに自分達の名前を呼ばせるように仕向けたのか。オルバは、自分でもその理由に思い当たらなかった。意識を保たせるには他にも方法がありそうなものなのにわざとそう仕向けたのはどうしてか。
理由などもはや必要ではなかった。自分達はアリババが憎い。殺したい程に憎い。けれども、殺すことは許されていないから痛めつけるのだ。何度も何度も。
アリババが意識を失っても陵辱は続けられた。アリババは目を隠されながらも名前を呼んでいた。その名前はあまり一致せず遊びの領域を出ることはなかった。ただ、最後に、本当に意識を失う最後の直前にアリババは助けを求めるように、天井に向かって手を伸ばした。
……たす、け、て……はく、りゅ………
白龍の名前を呼んで。


アリババが意識を失い、それでもなおオルバ達は無体を続けようとしていた。
「終わりだ」
ただ、その一言が、白龍から告げられるまで。



精神支配を解く前に奴らを追い出した。
もう、あれらは必要ないかもしれないな、そうぼんやりと白龍は思う。
ドロドロと悲惨な様相なアリババを見下ろして、先ほどまで天井に向けられていた手を掴む。
必死に手を伸ばしていた姿を思い出して、クスリと嬉しげに白龍は微笑むと服が汚れる事も厭わずアリババを抱え上げた。
前とは違いボロボロになっている体は随分と痛々しいものである。
少しばかりやり過ぎたか?と白龍はアリババを運びながら傷と一つ一つ確認する。
酷いのは、首と腰の痣だろうか、簡単には直らないだろうと言う事は誰の目にも分かった。
治すのも良いが、あえて残しておくのも良いか。
ただ、このままこれを晒されるのは不愉快だ、何か覆い隠せるものでも用意しよう。
この人が俺に縋ってくるまで、随分と時間が掛かったような気がした。
実際は、どうだっただろうか、この人を手に入れてから随分と時間の流れがあやふやになっている気がする。
だが、確かにそれなりの時間は経っているだろう。
確かに、折れにくい人だと思っていたが、まさかここまで時間が掛かるとは思っていなかった。
けれど、ベリアルを使わず落とすと決めていた。
この人が、この人自身の意思で従ってくれるよう、そうなる様に誘導する。
その甲斐あってか、この人自身の口から俺の名前が出て助けを求めてくれた。
その時を、どれだけ待ち望んでいたことか。
漸くこちらに落ちて来てくれた。
ならば、それに答えなければいけない。
大丈夫です、きちんと幸せにして差し上げますから。
まずはゆっくりと傷を癒して差し上げよう。
きっと傷が沁みて痛いだろうから、目を覚ます前に身体を清めてしまった方が良い。
そして、いつも通り優しく抱きしめて、目覚めるまで待とう。
目覚めたら驚くだろうか、それとも安堵してくれるだろうか。
どちらにせよ、貴方はもう俺のものだ。

髪の毛の先から爪先まで、丁寧に、丁寧に磨き上げる。
人の世話をするのは嫌いでは無かった。
明るい色をした髪の毛も、柔らかさだけではないしなやかな筋肉が付いた四肢も、剣を握っているからこそ固くなっている指も、それを何もかも触れて、丁寧に労わる様に清めてゆく。
あまり刺激しないように気を付けながら、傷口を洗った。
どの傷も、深い訳では無い、全て血は止まっている。
体の表面が清められてお蔭が、穏やかな表情をしているのを見つめながら、少し前までは秘められていた場所に手を伸ばした。
酷使されていた場所は、少し熱を持っている。
ゆっくりと、強い刺激を与えないように、指先を埋めて、中のそれを掻きだした。
出来る限り刺激しないようにとと注意を払っているものの、中で指を動かす度に、ぴくりぴくりと意識を失った四肢がわずかに反応を示す。
それを終えると、意識を失った身体を持ち上げて、湯船にそっと浮かべた。
湯で身体を暖めながら、濡れた髪に口付けを落とす。
水滴の音しか響かない静かな空間に目を閉じると、手探りで湯に浮かんだ手を重ねた。
湯船につかった身体が温まったのを確認して、身体を引き上げる。
用意してあった、柔らかな布で体の水分をふき取って、軽く髪も拭いて、寝室に戻ろうと歩き出した。
人の居ない廊下を通って、寝室に入る。
すでに綺麗に整えられていた寝台に静かにその体を横たえさせた。
こんこんと眠り続ける姿を見つめながら、頬を軽く撫でる。
寝台の横に備え付けられている机から、薬を取り出して傷口一つ一つに丁寧に塗ってゆく。
塗り終わって、薬を片付けると、いつもの通り、抱きしめる。
首に付いた痛々しい痕を撫でて、眠りについた。


prev|TOP|next

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -