夜、私は自室からこっそり抜け出して湖に向かった。というのも、エレンのことが気になってどうしても寝付けずにいたからだ。壁外調査から戻った私に、エレンは無事でよかったと、揺れる瞳で、泣きそうな顔で伝えた。
私は、きっともう、分かっているのだ。その瞳が揺れる理由。その顔がくしゃりと歪む理由。それはエレンが本当に私のことを心配してくれていて、そして愛してくれているから。多分、告白される前からわかっていた。ただ、自分の弱い所に踏み込んで欲しくなくて、気づかないフリを続けてきただけだ。もう、エレンは子どもじゃない。私より大人で、恋だとか愛だとかもちゃんと分かっていて、それで私に告白してきてくれたんだ。なのに、私はなんてことを。

「ばかだ、私」

今更後悔が押し寄せてきて、ぽろぽろと涙が溢れる。年齢の差なんて関係ない、苦し紛れの言い訳だ。エレンの純粋な気持ちを、私のばかげた利己心のために踏みにじるような真似をしてしまった。もう、戻れない。こんなことをしておいて、今更気付いた気持ちをエレンに伝えることなんて、絶対に駄目だ。

「う、……っ」

エレンは私を愛してくれてる、私もエレンを愛してる。それでも私にハッピーエンドなんてこない。一度エレンを傷付けた私が幸せになんてなれるわけない。初めての恋だった。
込み上げる思いに嗚咽が漏れる。声を上げて泣いたのは、一体何年ぶりだろう。



「……名前か?」

突然、低い声で名前を呼ばれた。ああ、なんてタイミングが悪いの。泣いている所を兵長に見られるなんて。顔を上げることができずにいる私は、肩を震わせて泣くばかり。

「どうした」

兵長の、いつもの数倍優しい声にまた涙が溢れる。

「っ兵長、私……、」

涙でどうしても続きが言えない。そんな私に、兵長は静かに背中を撫でてくれた。

「大丈夫だ」

いくら兵長が慰めてくれても、涙は止まらない。私の涙は多分エレンにしか止められない。ああ、本当に。いつの間に、こんなに好きになっていたんだろう。





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