名前が壁外調査から帰ったのは、出発から丁度一週間たった日の朝だった。訓練兵の宿舎を抜け出して、一週間ぶりに名前の姿を確認する。今回も名前は生きて帰ってきた。

「名前!」
「えっエレン!?来ちゃだめじゃない!」
「よかった……無事で」

この一週間、一日中名前のことばかり考えて過ごした。冷たくなって帰ってくる名前を夢に見るから、睡眠もろくに取れなかった。でも、手を握ると感じる温かさ。大丈夫だ、生きている。温かい名前の体温に愛しさが込み上げる。一週間前に言われた言葉をふと思い出した。興味本位なんかじゃない。愛してる。俺は名前のためなら死んでも構わないと思った。

「エレン……」
「名前、早くしろ」

突然、男の声がかかった。見るとそこにはあのリヴァイ兵長が、眉間にシワを寄せて馬を止めている。

「すみません、すぐ行きます!じゃあまたね、エレン。来てくれてありがとう」
「……っ待てよ!」

俺が止める声も聞かず、名前は急いで馬を走らせた。








あれから2日たった。名前と話す機会を伺うものの、この2日間一度も顔を合わせていなかった。宿舎を抜け出して来た湖には、月がゆらゆらと揺れている。
出てくるのは溜め息ばかりだ。折角思いを伝えたというのに、全く良い方向に進む気配がない。逆に前より距離ができた気がする。
どうしていいか分からず、少し歩こうと思って腰を上げたその時、近くで足音が聞こえた。思わず近くの木に隠れた俺は、とんでもないものを目にする。

「兵長、私……、」

そこにいたのは名前と、考えてもみなかった人。リヴァイ兵長だった。

「大丈夫だ」

普段の兵長からは想像できないような柔らかい声。慈しむように名前の名前を呼ぶ声が聞こえて、一瞬にして思考がショートする。自分には、ここで出て行く理由も勇気もない。なぜか頭がガンガンと痛んで、俺は耐え切れずに逃げ出した。





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