ずっと子どもだと思っていたエレンに告白された。私の中のエレンはずっと小さいままで、弱くて、頼りなくて。でもそれはどうやら思い込みだったらしい。私を好きだと言った瞳はどうしようもなくまっすぐで強かった。そんなエレンにドキリとしたのも事実で、だから、私は自分に嘘をついたのだ。踏み込むのが怖い。私の弱さのせいできっとエレンを傷付けてしまった。自分の弱さに泣きたくなった。
「……エレン、」
壁外調査に出かける朝。立体機動装置にガスを補給している時だった。目の前に影が落ちたので顔を上げれば、そこにはいるはずのないエレンが立っていた。
「、どうしたの?」 「今日、壁外調査だよな」 「うん…そうだよ」
この間の告白以来、初めてエレンと言葉を交わした。もっと避けられると思っていたけれど、意外にも向こうから話しかけてきてくれたことにほっとする。
「………」 「エレン?」 「大丈夫か?」 「えっどうして?大丈夫だよ」
まさかエレンに心配されると思っていなかった。壁外調査には何度も行ったことがある。今まで怪我することはあっても、無事帰ってこれた。それでも、今日、生きて帰れる保障はない。正直、怖くてたまらなかった。
「俺はお前が大切だ。だから、絶対死ぬなよ」
一瞬、エレンの胸に飛び込みたい衝動に駆られた。それをどうにか押しとどめて、余裕な笑みを貼り付ける。当たり前だよ、と返すけれど、心の中はぐちゃぐちゃだった。
どうかそんなに優しい言葉を吐かないで。ずっと取り繕ってきた「大人な私」を崩さないで。お願いだから、弱い私を見ないで。
でも、本当は。
歯痒い思いをまた隠して、私は大人なフリをする。
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