たとえるならばそう、お日様みたいな人。きらきらの金の髪も、眩しい笑顔も、あったかい優しさも、全部がそう思わせる。
彼と一緒にいると、陽だまりにいるみたいにぽかぽかして、優しい気持ちになる。三和くんは、そういう人だった。
「…えーっと、」
その三和くんが、今現在わたしの目の前に立っている。いや、立っているのは別にいいんだ。問題はそこじゃない。
「ーーーーーだからさ、好きなんだよ。」
なまえちゃんが、と言った三和くんの顔は、今までに見たことないくらい赤い。なんでだろう、見てるこっちが恥ずかしくなる。
「…な、んで…?」
「…なんでって、聞かれてもなあ…」
困ったように眉を下げて、わたしを見つめる三和くん。そんな表情でもかっこいいのは、どうしてなの?わたしが盲目すぎるのかな、…いや、そんなはずはない。
わたしが彼を好きだ、という贔屓目をなしにしても、三和くんはかっこいいのだ。面倒見がよくて、しっかりしてて、優しくて。しかも性格だけじゃなく、顔だっていい。
「…三和くんは、わたしにはもったいないよ。」
「…んなことねーよ、俺は、」
「や、だ…聞きたくない。」
普通だったら喜ぶはずのシチュエーション、大好きな人に放課後の教室で告白される、なんて。だけどわたしは、素直に三和くんの言葉を受け取れずにいた。本人にも言ったけれど、もったいない、のだ。彼にはわたしなんかより、もっといい子がいる。
「…わたしなんかの、何がいいの…?」
一番疑問に思っていることを、問うてみる。彼に比べたらわたしは、なんの取り柄もない、普通の女子だ。もっと性格がよくて可愛い子なんかいくらでもいるし、特別秀でてる部分があるわけでもない。三和くんはわたしの何を見て、好きだなんて言っているのだろうか。
「…そうだなぁ…正直全部好きなんだけど、」
「なっ…!」
「一番は、あれだ。…向日葵みたいなとこ。」
「ひま…わり?」
向日葵と言えばあれだ、夏に咲く太陽そっくりの黄色い大きなお花。可愛いしわたしも好きだけど、わたしのどこが向日葵みたいなのだろうか。自分で言うのもなんだが、わたしは正直地味で目立たない部類に入ると思う。あんな派手なお花には、到底似ても似つかない。
「向日葵ってさ、太陽に向かって咲くだろ?」
「う、ん…。」
「一生懸命俺を見つめる姿が、太陽を追いかける向日葵みてーだなって。」
「ーーーーー!」
気づいてた、んだ、三和くん。わたしが見ていたこと。すごく恥ずかしい、でもなんだかくすぐったくて嬉しい。自分の気持ちなのに、自分の中でうまく消化できないよ。
「…俺はずっと、なまえちゃんを見てた。そしたらなまえちゃんも俺を見てるのに気づいて、めちゃくちゃ嬉しかったんだ。…自意識過剰かもしれねーけど、俺ひょっとして好かれてんのかな、なんて思ったりして。」
じわり、胸の奥に三和くんの言葉が染み込んでいく。向けられた眼差しはなんだか優しくて、どうしたらいいのかわからない。何から処理していくべきなのか、何から彼に伝えればいいのか。
「…三和くんは、お日様みたいだよ。」
声が震えて、その一言はなんだか情けなかった。でも三和くんは、わたしのお日様は、にっこりと眩い笑顔を浮かべて、わたしの頬をそっと撫でた。その手もあたたかくて、優しい。泣いてしまいそう。
「じゃーやっぱ、なまえちゃんは向日葵だな。」
ああ、眩しい。ずっとずっと焦がれていたお日様が、今わたしの目の前にいる。
「…三和くん、」
はらり、滑るみたいに涙が頬を伝っていく。涙でぼやける視界には、眩しいのにあたたかい笑顔が揺れている。
「…好きです、」
お日様中毒
Title by:休憩