目の前できらりと輝くそれが、いつまで経っても現実味を帯びない。夢か幻を見ているのではないか、とさえ考えてしまう。




「……なんで、」




情けない声でやっと絞り出した言葉は、純粋な疑問。なんで、どうして、何故、ぐるぐるぐるぐる頭を回る。その間にも、目の前のそれが消えるのではないかと思ったけれど、いつまでたってもそこにそれは、あるまま。




「カイくん、」




からからに渇いた喉が紡ぎ出した呼び声は、ゆるく空間に溶けた後、響きを失って消えていく。もう一度呼ぼうとしても、ひゅうと情けない呼吸音が鳴るだけで、声帯を震わすことはなかった。




呼吸を少し整えて、ちらりと目線を上げる。目の前の彼の表情は、普段通り。ベイバトルをする時のそれとは大きく違う、何一つ感情の読み取れない無表情に近いそれ。かろうじて瞳の奥には、執念にも似た強い思いが見えて、その鋭さに心臓がどきりと音を立てる。




「ーーーーーわからないのか、」




低く冷たく、唸るように吐き出されたその言葉は、わたしの細胞に直接染み込んで体温を奪っていく。冷たい汗が背中を伝う感覚に、寒くもないのに思わず身震いした。




「貴様はそこまで、バカではないと思っていたが。」




「…っ、わ、たし…」




「…ああ、何も言わなくていい。なまえ。」




ひやりと冷たい感触。わたしの体に触れた白銀。熱くなる心臓は、わたしの意思に反して大きく鼓動を繰り返している。




「俺のものになれ、」




カイくんのその言葉は、まるで呪縛のように、わたしの心の柔らかな部分を蝕んでいく。頷くことも首を横に振ることもできずに、ただただ棒のように突っ立っているわたし。まるで人形にでもなってしまったかのような、そんな気分だった。




「…っ、わたし、は…」




ただただ、冷たい白銀のそれだけが現実で、後のことはよくわからない。




一番最後、なまえ、とわたしを呼んだカイくんの声だけが、いつまでもいつまでもわたしの中に残響し続けていた。













プロポーズされたお話なのか、カイくんに刺されるお話なのか、

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