「あ…っ、せんぱ…」




下半身を曝け出して、机に伏せるみたいにしがみついているわたしを、芭蕉先輩が背後から覆い被さって指で犯す。くちゃ、と湿った生ぬるい音が、空き教室に響いては消えていく。




「ふ…っあ、あっ…」




体内に感じるのは、先輩の指が蠢く感覚。何本入っているんだろう、ってくらいにバラバラにいろんなところを突かれる。頭がくらくら揺れて、それに合わせて体も震えた。




「やあっ…ばしょ、せんぱいっ…。」




視界が涙で歪んで、頬をゆるゆると滑っていく。悲しくも苦しくもないのに、次から次へと、止まらない。それと同じように、与えられる快感も、止まってはくれない。




「ぁ、あっ…や、せんぱ…だめっ…!」




「…うるせーよ、」




ぐ、と抱き寄せられるみたいにして、わたしの体は机から引き剥がされる。芭蕉先輩の腕に持ち上げられた上半身が、びくっと跳ねる。




「ぁ…」




先輩に支えられている状態の体が、小刻みに震えているのがわかった。まるで囚われてるみたい、心も体も全部、先輩に。




「…こっち向け、ウサ子。」




「ん…むっ、」




言われた通りに首を捻って先輩の方を向くと、噛み付くみたいに荒々しく口付けられる。ちゅ、と甘ったるいリップノイズを立てながら、下唇や舌を吸うように貪られる。




「…は…っ、せんぱいっ…」




わたしの顎を伝った唾液を舐め取ると、先輩は再び中に入った指を動かす。いきなり再開された動きに体が対応しきれず、強烈な電流が脳に流れた。




「ひあっ!あ、ぁっ…んぅ…」




びくり、びくり、陸に上げられた魚のように、一定のリズムで体が跳ねる。気持ちよすぎて、頭がおかしくなりそう。視界がちかちかと、等間隔で白く閃く。




「や、だめっ…せんぱ、イッちゃうよぉっ、」




快楽の波に飲まれそうになるのを堪えて、泣きながら先輩を見つめて訴える。だけどそんなこと知るかとばかりに、指の速度はますます速まった。




「ぁ、や、せんぱっ…!ん、あ、ああぁっ!」




一瞬、強い快感がわたしの体を一気に駆け巡って、頭が真っ白になるほどの絶頂を迎えた。同時に、解放される体。力なく机にそれを預けて、目を閉じる。余韻でひくりと体が動くのを、普段より判断が鈍い頭がどうにか感じ取った。




「ーーーーーせ、んぱい、」




机に体を預けたまま芭蕉先輩を見ると、ベタベタに濡れた指をぺろりと舐めているのが見えた。なんで指があんなことに…なんて、聞かなくてもわかっているけど。
(100%わたしのせいだ、絶対そうだ)




「なんだよ、ウサ子。」




「え、いえ…あの…終わりですか?」




わたしは芭蕉先輩にイカされたけど、先輩はまだ挿れてすらいない。いつもだったら、わたしが余韻に浸る間もなく、ゴムつけてさっさと挿れちゃうのに。




「…別に、ヤリたかったわけじゃねーし。」




「え?…じゃあ、なんで…」




「…お前が泣くのが見たかったから。」




「…え、えっ?なんですか、それっ。」




どんなサディストのセリフだ!とツッコみたくなるようなことを、平然と言ってのけた芭蕉先輩。もともと力が入らなかった体から、さらに力が抜けていく。机からずり落ちて、へなへなとその場に座り込むわたしを、芭蕉先輩はニヤリと笑いながら見ていた。




「なんだよ、シてほしかったのか?」




「あう、べ、別にそんなこと…ないわけじゃ、ないですけど…。」




なんだかんだ言いながらも、結局わたしも芭蕉先輩とエッチするのが好きなのだ。世界で一番大好きな人と繋がれるなんて、とっても幸せだから。…だから、こんな言い方すると変態っぽいけど、実際わたしも期待、とかしてたわけで。
(あうう、恥ずかしい…)




「…お前がそーやって期待したような顔するから、イジメたくなんだよ。」




「ふ、ぇ?」




「とにかく、今日はヤらねーからな。」




「ええぇっ!せ、先輩ひどい!」




「…うっせーな、これで我慢しろ。」




「んぅ、」




腕をぐいっと引っ張られて、唇に柔らかくキスされる。それはさっきの荒々しいそれとは違って、甘くて優しい。まるでわたしを宥めるかのように。




「ーーーーーっ、先輩の、ばか!」




「あ?」




「こ、こんな優しいキスされたら…ますますシたくなっちゃうじゃないですかああっ!」




「(めんどくせー、こいつ)」




じんわりと欲望の熱が灯った体を抱きしめて、わたしは嘆いた。そして、それを呆れたように眺める芭蕉先輩。…結局その日は、それ以上のことはシてもらえなかったのでした。








あふれだすよくぼう






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