「…せんぱい、」




「イヤだね。」




「行きたいです。」




「ムリ。」




「うわあああぁぁん!いいじゃないですかあ!練習試合に着いて行くくらい!」




こんにちは、今日も元気に芭蕉先輩を追いかけてます、花森芽雨です。




実は本日、剣道部のマネージャーをしている楓ちゃんから、今度の週末に白零高校というところと練習試合をするとの情報を得たのです!
(しかもあみだで、愛する芭蕉先輩が選抜メンバーに選ばれたらしいのです!)




これはもう応援に行くしかないと、意気込んで芭蕉先輩に会いに行ったところ、来るな、の一言でバッサリと両断されました。
(な、何故だ!何故ですか芭蕉先輩!)




「わたしおとなしく応援してます!」




「お前がおとなしくとか、ムリだろ。」




「ずっと芭蕉先輩にくっついてますから!」




「ウゼーからやめろ。」




「芭蕉先輩だいすきですうぅぅわあああぁん!」




「あーもー、黙れバカ!」




芭蕉先輩の相棒(竹刀)で、頭をごつんと小突かれる。正直痛い、かなり痛い。だけどここで折れるほど、わたしも物分りのいい子じゃないんですよ先輩!
(愛する先輩の勇姿を見るためだもの!引かないよ!)




「せんぱーい…」




道着を少しだけ握って、芭蕉先輩にぴとっとくっついてみる。振り払われることはない、本当に芭蕉先輩は優しい。




「一緒に行きたいです…。」




「離せ、バカ。」




「やですよ…先輩と一緒にいたい…。」




うるうると視界が揺れて、涙が芭蕉先輩の道着に滲む。ぴくりと芭蕉先輩の体が跳ねて、盛大なため息が聞こえた。




「まあ、連れて行くくらいいいんじゃないか?」




「はァ!?」




「も、護国先輩っ…!」




引かぬ引かぬの押し問答を見兼ねたのか、芭蕉先輩と仲良しの護国先輩が、助け舟を出してくれた。
(し、しかもわたしの味方してくれてる!)




「芭蕉がしっかり見張ってれば、問題ないよ♪」




「ヤだね、こいつの御守りなんてムリ。」




「せ、先輩っ、わたし先輩にご迷惑はかけません!」




きょろり、と芭蕉先輩の瞳がわたしを見る。きれいな黒目に思わず見入っていると、ごつん、頭にさっきより大きな衝撃。
(い、痛い!さっきの比じゃないくらい痛い!)




「…フラフラどっか行くな。」




「は、えっ?」




「勝手にいなくなったら、置いて帰る。」




「へ、あ、はい!」




頭が追いつかないままとりあえず返事をすると、芭蕉先輩は舌打ちをして、練習に戻ってしまった。
(これは…一緒に行っても、いいってこと?)




「…芭蕉も、芽雨には甘いねぇ。」




マスクをした護国先輩が、目だけで笑ってそう言った。その言葉を理解すると、かあっと顔が熱くなる。




「…本当に、いいんですかね?わたしが行っても…」




「芭蕉がいいって言ったんだから、いいんじゃないかな。馬空さんも、部外者が一人くっついてきたところで、気にしないだろうし。」




「…ありがとうございます、護国先輩。」




熱くなった頬を扇ぎながら、早くもわたしは週末に思いを馳せるのだった。















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