「…っ、ん…」




ぎり、と唇を噛んで、喉から溢れる喘ぎが口から飛び出さないようにする。心臓が速い、頭はくらくらして、下半身が熱くて溶けてしまいそうだ。




「声、我慢すんなよ。」




いつもより熱のこもった声で囁かれて、お腹の奥がじわっと刺激された。繋がってる箇所が疼くみたいに脈打つ。生理的な涙が滲んできて、ぽたり、シーツに落ちて染みを作った。




「…っあ、りばば、くんっ…」




戦慄く唇で紡いだ彼の名前は、泣きそうに震えていた。怖くも悲しくもないのに、涙だけが頬を伝って止まらなくて、どうしようもない。宛もなく伸ばした手が、背後から伸びてきたアリババくんの手に握られて、指を絡めて捕らえられる。どうしよう逃げられない、逃げるつもりがあるわけじゃないけど。




「っあ、や…うっ、」




ぐちゅ、といやらしい水音。アリババくんと繋がった下半身が、別の生き物みたいに反応して、思考を狂わせていく。少し抜かれて、また入れられて、同じ動きの繰り返しなのに、なんでこんなに気持ちいいんだろう。




「ふ、あっ、あぁ、んゃっ…」




「―――――リセ、」




鼓膜を震わす呼び声は、甘ったるくて仕方ない。大好きなアリババくんの声に、頭蓋骨から犯されていくような気さえした。




叩きつけるみたいに打ち付けられる腰、先端が奥に当たって苦しいのに気持ちいい。セックスってなんで、苦しいのと気持ちいいのが一緒になってくるんだろう。おかげでこっちはいっぱいいっぱいだ。…アリババくんは苦しくなんかなくて、気持ちいいだけなんだろうけど。
(不公平だ、とっても)




「ひ、うっ…あ、やだぁっ…あぁっ、ひっ…」




ぐちゃぐちゃ、自分の下半身からそんな音が鳴ってるのが、嫌でも聞こえる。わたしの頭もぐちゃぐちゃだよ、もう何も考えらんなくなってきた。たぶん限界が近い、んだと思う、これは。




「やだ、だめ…だめぇっ、アリババくんっ…!」




「…っ、イくのか?」




聞かないでよそんなこと、なんて言えない。口からは喘ぎしか出ないし、脳みその命令が明らかに快楽に負けてしまっている。




「う、やぁっ、ああ、あ、やああぁぁあっ…!」




びくん、と陸に上げられた魚のように体が跳ねる。頭の奥は真っ白で、身体中がアリババくんに与えられた快楽の海で溺れていた。絶頂、ってこういうことなんだ、って嫌でも理解する。




「…あ、っ…リセ…!」




一瞬遅れて、アリババくんの体が震えた。もちろんそのまま中で、なんてわたしは絶対に許さないから、イく直前に引き抜いて、背中の辺りに飛沫を飛ばされる。熱い…。




のそのそと体を起こして、背中に飛んだものをシーツで拭く。アリババくんのシーツだけど、自分で出したものだし大丈夫だろう。疲労感がどっと押し寄せてきて、仰向けにころりと転がった。うーん、体の熱が冷めない。




「…っ、はー…」




しばらく放心状態だったアリババくんは、大きく息を吐いた後、力尽きたようにわたしの上に覆い被さってくる。…重たいなもう、わたしだって疲れてるのに、なんだこいつ。




「…リセ、」




「んー…む、」




ちゅ、と柔らかく唇を合わせてきたアリババくん。…くそう、そんな優しいキスされたら、何も言えないよ。
(何だかんだわたしも、アリババくんには甘いんだなあ)




行為後特有の気だるさに全身を支配されて、下半身には未だに何か入ってるみたいな違和感。シた直後だから当たり前なのかもしれないけど。おまけに腰はミシミシ軋んでる気がするし、体の節々が若干痛い。…明日立てるかな、わたし。




「…ばぁか、」




悪態を吐くと、眉を下げて苦笑しながら、謝るみたいにおでこにキスされる。…アリババくんって、困った顔が似合う気がする。なんとなく。もちろん笑顔も好きだけど。




「好きだ、ばか。」




絡んだままだった指に力を込めて、アリババくんの目を見つめる。曇りのないきれいな目、丁寧に磨かれた水晶玉みたいだ。




「…俺だって好きだ、ばーか。」




へらりと笑ったアリババくんに、もう一度キスされた。…嬉しい、なんてわたしも大概だろうか。まあアリババくんが好きなんだから仕方ない、うん。




外はまだまだ暗い、今夜はあと何回アリババくんと繋がるのか。わたしにはまだそれはわからないけれど、とにかく胸を占めるこの愛しさが、重なった唇や絡み合う指から全部ぜんぶ伝わればいい。













Title by:空想アリア

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