言葉の重みって言う本人はなかなかわからなくて、相手に伝わってから気づくことがほとんど。




「お前の助けなんか、いらねーよ!」




だからきっと、アリババくんも深い意味があって言ったんじゃないってわかってるの。わかってるけどやっぱり、その言葉はわたしには辛すぎて重たすぎて、うまく受け止められなかった。




「―――――っ…」




普段より狭い視界が、水分でどんどん満たされていく。




下瞼がそれを抱えきれずに頬へと流しても、まだなお涙腺のゆるみは止まらなかった。




「な、」




「アリババ、くん、」




アリババくんが言い放った言葉は鉛みたいに重く、わたしの心の奥の方にのし掛かったのだ。




まさか彼の一言にこんなにダメージを受けるなんて思わなかったし、たぶんアリババくんも、わたしがこんな風に泣くなんて予想外だったと思う。




「ちょ、リセ、」




「…ひっ、く、」




声が声にならなくて、嗚咽ばっかり口からこぼれていく。でもたとえちゃんと喋れたとして、わたしはアリババくんに何を言うつもりなのだろう。自分のことなのに、よくわからない不思議。




「ご、ごめんリセっ、泣くなよ。」




どうしてアリババくんが謝るのだろうか、別に悪いことはしてないし言ってないはず。ただ心のままを言葉にして、わたしにぶつけただけの話なのだから。
(でもよくよく考えると、それはそれで悲しい)




「…い、らない?」




「え?」




「わ、たしっ…いらないっ?」




やっとのことでわたしが絞り出した言葉は、なんとも情けないものだった。頭ではこうやってあれこれ考えてるのに言葉にできないあたり、やっぱり頭と体は別物なんだろう。




「ちが、リセ、あのっ、」




「やだ、ごめん、アリババく…っ、」




何に対してのごめんなのか、自分でもわからない。でも胸が痛くて苦しくて、こんなに悲しいのはきっとわたしに非があるからなんだ。




「わたしっ…もっと頑張るからっ…」




心臓はずくずく疼いてるみたいに痛むし、涙は痛みに伴うようにとめどなく流れ続ける。




止まらない、止まらない、それほどにアリババくんからの"いらない"の一言は悲しくて仕方なかった。




アリババくんに必要とされないことは、わたしにとって誰にも必要とされないことと同じなのだ。
(どうしてなのかって、それは、ええと、どうしてだろう)




「いらないなんて、言わないでよ…っ。」




「…っ、ごめんリセ…。」




長い二本の腕がわたしに向かって伸ばされて、体に巻き付くみたいにして抱き寄せられる。




肩口に顔が当たって、胸と胸がぶつかる。腕の力で強くアリババくんに引き寄せられていて、身動きが取れなかった。




「俺が悪かった、から。」




「アリ、ババく…」




「だから泣くなよっ…お前のこといらないなんて、思ってねーから…。」




「…う、ぅーっ…」




その声にひどく安心して、わたしはまたバカみたいに泣き出す。




ぎゅう、と更に強く押し付けられるように抱かれる体。ぶつかっている胸が強く圧迫されて、なんだか苦しい。




「あ、りばば、く、」




苦しみと悲しみが渦巻く思考の中、次もし彼にいらないと言われた日には、この腕の中で死にたいと思ってしまう。




それほどにわたしがアリババくんに依存するのは何故なのか、アリババくんに必要とされたいのはどうしてなのか、それはもうわからないけど。













Title by:泪雨

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