頭のてっぺんからほっぺたまで、するすると滑っていく自分のものではないそれ。
触れ方が上手なのか、それとも紅覇だから気持ちいいのか、どっちなのかわたしにはよくわからない。
「―――――ふにゃあぁぁあ…。」
「おい、変な声出すなよー。」
呆れたようにわたしを見る紅覇の瞳は、水晶玉みたいに透き通っててきれい。
その瞳もわたしは好き、だけど指はもっともーっと好きなんだよ。
「んむ…だって、紅覇の指気持ちいーの。」
「ほんっとセレネって、僕に撫でられんの好きだよねぇー。」
ごろごろと猫みたいに喉を転がされると、気持ちよくてふわふわした気分になる。
だってだって、いつもはあんな大きな刀を握って人を殺めている紅覇の指が、今はわたしを撫でてくれているなんて、こんなに幸せなことはないもの。
「気持ちーよ、紅覇…。」
「ふふ、じゃあさー、」
首もとをゆるゆると撫でていた紅覇の指が体のラインをなぞって、足の間に滑り込むように侵入してくる。
「もっと気持ちいいこと、しよっか?」
そう言って無邪気に笑った紅覇に逆らうことなんて、わたしの頭には微塵も浮かばなかった。
―――――…
「っふ…あ、」
ぐちゅ、と粘着質な音が鳴って、紅覇の指が中をかき回すみたいに動く。
「ひあ…んっ、」
「どお?セレネ。」
「は、うっ、気持ちい、気持ちいーよ紅覇ぁっ。」
撫でられるのも気持ちよかったけど、これはもっと気持ちいい。さっきのふわふわした気持ちよさじゃなくて、体ががくがく震えて、背中から頭がびりびり痺れて、おかしくなっちゃいそう。
「あ、ぁっ、んう…ひっ、」
男の子にしては細い目の前の肩を、震える手のひらでぎゅうと掴む。
悲しくなんかないのに無意識に涙がぼろぼろ出てきて、ほっぺたから落ちていく。
「イイよその顔、もーっと見せて?」
泣いてるわたしを見て、紅覇は嬉しそうだった。
「あぅ、んんっ、ひ…やあっ。」
体の真ん中が熱くなってきて、頭の奥がちかちか白く閃く。
涙でぼやけてた紅覇の顔が白く霞んで、飲み込まれていく。
「こう、はっ、あぁっ、」
途切れ途切れになりながら名前を呼んだら、紅覇は空いた方の手でわたしの手を握ってくれた。指と指が絡み合って、手が繋がれる。指、紅覇のゆび、気持ちいい。
「あんっ、やう、あっ…」
「イく?セレネもうイッちゃうの?」
涙が止まらない、紅覇が好きなのも気持ちいいのも全部、ぜんぶ溢れて止まらないの。
「や、あっ、だめえっ…イッちゃうようぅっ。」
「いいよイッても、ほーら。」
響く水音が大きくなって、紅覇の指の動きが速まった。それと同時にふわふわ、ちかちか、どくどく、体から沢山音が溢れて、溢れて、
「やっ、あ、あっ、イくうぅぅっ。」
真っ白い渦みたいなのに飲み込まれて、全身の力が一気に抜ける。
ひくり、ひくり、どこかわからない部分が痙攣するのを感じた。
「イッちゃったねぇー。」
紅覇はくすくす笑いながら、わたしの中から指を引き抜く。
「ふにゃうっ、」
「気持ちよかったぁ?」
「うん…気持ちよかった。」
「ん、よしよし。」
紅覇の指がまたわたしの頭を撫でる、気持ちいい、とっても気持ちいい。
「んぅ、紅覇ぁ、」
「イイコだね、セレネ。」
そう言ってにっこり笑った紅覇は、中から抜いた指をわたしの口元に近づけた。
「ふみゅ、」
「セレネはイイコだから、きれいにできるよねぇ?」
「んむ、」
液体でべたべたに濡れて光った紅覇の指を、口に含む。
しょっぱいような苦いような不思議な味、だけど紅覇の指だと思うと、それだけで幸せだった。
「んむ…ちゅ、」
「ふふ、可愛いなぁセレネは。」
わたしを撫でる指も、わたしが舐めている指も、同じ紅覇の指。だいすきな指。
「紅覇、だぁいすき。」
「僕もセレネのこと、だぁいすきだよ。」
もっと触れて、溺れさせてください、あなたの指に堕ちていく。
ゆびのじゅもん