「リセ、」
アリババくんがわたしを呼ぶ声は、わたしの細胞に溶け込むみたいに、すうっとわたしの中に入ってくる。
特別彼の声をきれいだと思ったことはないし、すごく好きな声質ってわけでもない。それなのに、アリババくんの声は不思議なくらい簡単にわたしの心に染み入るのだ。
「アリババくん。」
わたしが彼を呼んでもきっと、彼はこんな風には思わないと思う。
だけど別に、そんなこと構わなかった。
「アリババくん、」
彼に呼ばれるのと同じくらい、わたしは彼を呼ぶのが好き。
自分の声だって別に好きじゃないけど、彼の名を紡ぐ時だけ、わたしの声がすごく素敵なものに思えてくるの。
「ねえアリババくん、」
喉から発せられたものが、ただ空気を震わせているだけなのに、どうしてこんなにも愛しく思えるのだろう。
「だいすき、」
ああ、それはきっと、アリババくんが愛しいから、なんだろうなあ。
アリババくんが好きだから、アリババくんが関わることだと、なんでもキラキラして見えるんだと思う。
「…リセ、」
耳に残る心地よい響き、なんとなく嬉しくなって、アリババくんにぎゅっと抱きつく。
愛しさが胸から溢れ出して止まらない、すき、すきだよアリババくん。
「なあ、…もっと、呼んで。」
背中に腕が回されて、強く抱きしめられる。息が苦しくなって、胸がきゅうっと締め付けられた。
「…アリババくん、」
「リセ、好きだ。」
大きな手のひらが、わたしの頭を優しく撫でてくれる。
「…アリババくん。」
もっと名前を呼ばれたい、もっと名前を呼びたい。お互いの声が枯れるまで、ずっとずっと。
きっとわたしは、この先ずっとアリババくんの名前しか呼べなくなっても、後悔する時なんか来ないんだろう、なんて考えが頭の隅っこにぼんやり浮かんでは消えた。
君を呼ぶ声を、あげる
Title by:花畑心中
マギアニメ化おめでとう&声優決定記念!
アリババくん梶さんとか(^q^)