きれいなラインの首筋から垂れる赤い紐を引っ張って、噛み付くみたいにキスをする。歯が当たったのか、唇にちくりと鋭い痛み。それを鎮めるように、軽く舌で痛む箇所を舐めて、呆然としている彼を見つめた。
「…アホ面、」
一言そう言い放ってから、背伸びをして鎖骨に噛み付く。ぴくり、驚きに跳ねたアリババくんの体は、少しだけ熱かった。
「…ねえ、」
赤くなってしまったそこに、そっと指を這わす。なんとも言えない感情がこみ上げて来て、口元がだらしなく緩んだ。どうやらわたしは、今嬉しいらしい。
「何か言ってよ、アリババくん。」
ただただひたすら無表情に、わたしを見下ろしている彼に向けて呟く。普段の彼だったら、照れたり狼狽えたりするのだけど、今日はどうしたんだろう。
そんなことを考えていたら、後頭部を掴まれて、無理やりに口付けられる。息をすう間もないくらい激しいキスに、脳髄がくらりと揺れた。
「ーーーーーっう、ぁ…ん、」
無理やりにねじ込まれた舌が、わたしの口の中を縦横無尽に暴れ回る。 にゅち、くちゃ、といやらしい水音が合わさった唇から奏でられて、隙間からは行き場をなくした唾液がつうっと流れた。唇が焼けそうに熱くて、その熱が頭の奥にそのまま届く。砂漠で向こう側の景色が揺れて見えるみたいに、わたしの頭のなかもゆらゆらしている。
「…っは、ぁ…」
暫くして、ようやく唇が離れると、唾液の糸で口と口が繋がる。つうっと伸びたそれは、重力に逆らわずに弛んでぷつりとあっけなく切れた。
「…っ、アリババくん…」
「…甘い、な。」
いつものふにゃりとした笑顔とは違う、雄の顔で微笑するアリババくん。心臓までもが揺れるみたいに騒ぎ出す。
「…ねえ、もっと、」
くい、ともう一度、アリババくんの首元から垂れている赤い紐を引っ張る。吐息がかかりそうな距離でアリババくんの瞳を見つめると、優しい金色にわたしが映っているのが見えた。
「…欲張りだな、」
甘ったるい囁きが鼓膜を柔らかく震わせたかと思うと、再び唇が重なった。
メロウ・キッス
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