自分に向けられた指先がみっともないくらいに震えてるのが、おもしろいとか楽しいとかいうことよりも先に愛しいなぁ、なんて思ってしまったもんだから。
それが顔に出てたのか、椿は緊張しすぎて白っぽくなってる顔色のまま、真っ黒い目を瞬かせた。

そのまま止まってしまった動きを再開させるために首を傾げて見せると、びくりと肩を震わせて、もっと指先も震えさせながら、やっと俺に触れた。

最初は二の腕に。そこから肩に上がって、しばし時間を置いて―――ここまできてまだ迷うのか…椿らしいといえばそれまでだけど―――、首の後ろに腕が回される。さて、ここでまた時間がかかるのかね、と考えたとたんに引っ張られた。

土壇場までもだもだと悩むくせに一度腹を括ればこう、だ。だからこいつはたまらない。

引かれるままに前のめりになる一方で、椿自身もこちらに寄る。もともとあまりなかった距離が近づいてしまえば最終的にはゼロにしかならないわけで。

「―――、…っ」

あぁ、バカだな。また息止めてんの、こいつ。
ちゃんとやり方を一から教えてやったのに。練習だって何回もやっただろー?そろそろ上達してもいいんじゃない?いくらなんでもさぁ。

「ゃ、!」
「っふ…」

強張った頬を抓って作った隙に舌を捻じ込む。反射で下がろうとしたけど、後ろの壁に後頭部をぶつけるだけで終わった。痛そうな音がしたけど、気にすんのはあとだ、あと。

いまは目の前の御馳走だけに集中、な。お互いに。

「…っは、ぁう、ぅ、!」
「…こぉら、逃げんな」
「んむっ」
「ん、」

後ろに逃げれないとわかると顔を背けようとまでしたから、顎を掴んで固定させる。ここまできて逃げんなよ。嫌じゃないくせに。

素直になった方が可愛げあんぞ?

「っふ、ぅう、ー…!」
「…息しろって」
「でき、な」
「教えたろ?」

はふはふと離れたと同時に忙しなく酸素を取り込む姿は滑稽で笑いを誘う。でもそれ以上に可愛くて可愛くて、もうどうしてやろうか。

「ほら、もう一回」
「だ、っん!」

ダメ、なんて言葉聞いてやんねぇよ。だいたいお前のダメや嫌は逆の意味なんだから。
それくらいもうわかってんだっつーの。

触れるのはよく知った感触。触れては離れ、でも遠ざかることなくまた近づき重なる。息の仕方も思い出したのか眉間のしわも消えたみたいだ。
唇が離れても舌先は触れ合ったまま。かと思えば唇に噛みついたり噛みつかれたり。

行ったり来たりの愛情の受け渡し。これが体中の熱を上昇させるのは、毎度のことであるわけだ。






キス・シーソーゲー




thx 空想アリア





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