何度でも指きりしようと同じ設定


「最近どーよ」
「どーよ?」
「学校とか部活。慣れた?」
「うーん…うん」
「なんだその反応は」

ほんとに大丈夫かよ、と笑いながら言う達海さんはお気に入りの炭酸飲料を机に置いた。

「友達できたか?」
「達海さん、お母さんたちと同じこと言うんだね」
「大介のことが心配だからだっての。友達って大事だぞ?」
「大丈夫、できたよ。クラスも部活も一緒の子もいるし…」
「へぇ。それってどんな奴?」
「宮ちゃん?優しいよ、ときどきズバッときついこと言うけど。あ、ポジションはFWでね、とりあえずどっちが先にレギュラーになれるか競争中」
「へーぇ、競争ねぇ?ビビリな大介にしてはなかなか強気じゃん」
「…ビビリって…」
「はっはっ、がんばれよ。負けんのは悔しいからな」

あ、と思ったら案の定、ぽんぽんと頭を軽く叩かれた。それからくしゃりと撫でられる。
達海さんはいつもこうだ。いつまでたっても俺を小さいままの子供だと思ってる節がある。頭を撫でるなんて、高校生にやることじゃないと思う―――別に、嫌がるほどじゃないから何も言わないけど。

というか、むしろこうして達海さんからスキンシップを取ってくれる方が俺としてはいい。自分から達海さんに何かする、とか、できなくなったし…恥ずかしい、というか、なんというか。
達海さんとどう距離を置いたらいいのかわからなくなるし…。

「それにしてもなー」
「?」
「あのちっちゃかった大介がもう高校生とか…」
「…それは、おじいちゃんたちが同じこと言ってたよ…」
「おじいちゃん!?」
「うん」

おじいちゃん…と達海さんが遠い目をして呟く。
その姿はサッカーをしているときのものとは全然違っていて、こういうとこ見れるのって俺だけなのかなぁって思ったらなんかうれしくなった…というのも変だけど、ちょっともぞもぞする。ずっと年上の人だけど、かわいいなぁ、なんて思ったり。口には出さないけど、ね。さすがにそれを言ったら怒られそうだ。

「まぁ、なんにせよ、楽しそうでよかったよ」
「そう、なの?」
「だって俺、いつも大介のことを気にかけてやれないからなぁ。いや、気にはしてんだけど、なかなかこうやって話も落ち着いて聞いてやれないし、何か困ったことがあってもあんまり力になってやれないんじゃないかなーとか思うんだよ。遠征とかですぐに駆けつけてやれないこともあるだろうし。だから、問題なく毎日を過ごせてるんならよかったなって」

そう言って達海さんはまた俺の頭を撫でた。
俺よりもずっと大きい掌にそうされるとなんだか気持ちがよくて、目を細めて達海さんを見てしまう。ん?と首を傾げた達海さんと目が合ったけど、少し笑って達海さんがもっと頭を撫でてくれた。…うん、気持ちいい。

おとなしくされるがままになってると、手を止めた達海さんがため息をついた。

「お前ねー…なんつー顔してくれんの」
「かお?」
「そういうの、あんま他人に見せないように」
「???」

つん、と軽くつつかれたおでこに手をやって達海さんの言った意味を考えるけど、よくわからない。
そういう顔、てなに?俺、なんか変な顔したかなぁ…。というか、そんな変な顔を達海さんに見られちゃったってことだよな…。うわ、それはやだな。

「何を唸ってんの?」
「…別に」

唸ってないもん。…たぶん。

「こーら、そっぽ向くな」
「わ…っ」
「せっかくこうしてふたりでいるんだから、ちゃんと顔見せろよな」
「おっ、俺の顔見て何が楽しいの?」
「楽しーぞ?大介っていい反応するし、素直な反応するし、面白い反応するし」
「……」
「あ、うそです、うそ。そんなじとーっとした目でお兄さんを見ないでちょうだいよ。冗談だから、おもしろがってなんかないから!」

それこそ絶対うそだ。
だって達海さん、さっきからにやにやと笑ってばっかだし。そういう顔してるときってたいていろくでもないこと考えてたりするし。そういうのは達海さんは楽しいかもしれないけど、こっちとしては楽しくないことだったりするし。

でも、そんな子供みたいな達海さんを、俺は嫌いになんて絶対ならないけど。

「こうやってゆっくり喋るの、久しぶりだろ?だから大事にしたいんだって」
「大事に…?」
「そう。こうしてる時間と、大介を」

そう言って達海さんはまた俺の頭を撫でた。
ただ今回はぐしゃぐしゃとされるんじゃなくて、髪を梳くような柔らかい手付きで。

言葉だけでなく、本当に大事にされてるみたいで、自然と顔が熱くなってきた。きっと俺、顔が真っ赤になってる。今度ばかりは指摘されなくてもわかるよ、自分が変な顔してるって。でもどういう顔をすればいいのかもわからないから、じっとするしかできない。

「あー…だからな、大介くん」
「え、?」
「そういう顔はしちゃいけないって何回言わせたら…」
「え、え…そういう、て、どういう…」
「どうって…うーん…」

さっきまで楽しそうにしてた達海さんが今度は眉間を寄せて考え込む。

「まぁ、なんつーか、あれだよ、あれ」
「どれ?」
「俺の前だけにしときなさいっていうことだ、うん」
「………」

相変わらず達海さん、言ってる意味が全然分かんないよ。

それでも、大介は言うこと聞けるいい子だもんなー、だなんてまるっきりの子供扱いだけど、触れてくる手の優しさに免じて、今日は何も言わずにおとなしく目を瞑ることにしよう。





ける午後













arogさん、お誕生日おめでとうございます!
大遅刻のお祝いで申し訳なさいっぱいです…!(ガクガク)でも気持ちだけは目いっぱい込めました…!←
これからもよろしくです〜vV





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