27達×12椿(R/閲覧注意)


「こんにちはっ、た、たつみ、さん!」
「―――は?」

もう少しで咥えてたアイスの棒を落とすとこだった。




「おばさんに言われた?」
「うん…」

オレンジジュースの入ったコップを両手で抱えて飲みながら、大介はちらりと上目遣いでこっちを見てくる。その目に不安とか動揺が浮かんでることに気付いて、慌てて安心させるように笑ってやる。

「いきなり名字で呼ばれたからびっくりした」
「ごめんなさい…」
「謝んなよ、大介は言いつけを守ったいい子だろ?」
「でも、猛お兄ちゃん、びっくりさせちゃった…」
「んー、まぁ、確かにな」

しゅん、と見るからに落ち込む小さい頭を撫でてやると、きょとりとした大きな目が見上げてくる。

「おばさんに気を使わせちゃったな」
「?」
「俺はお前にお兄ちゃんって呼ばれんの、結構好きなんだよね」
「じゃあ、今のままでいい?」
「おう」

ほっとしたように笑う大介は近所に住む12歳の男の子だ。前から懐かれてはいたが、2年前から学校のクラブ活動でサッカーを始めてからは、学生時代にサッカー部だった俺が教えてやるようになって、それからはこうして家に遊びに来るくらい仲良くなった。勉強もときどき見てやってるしな。

小さい頃からの付き合いだからずっと大介からは『猛お兄ちゃん』と呼ばれてきたわけだが、どういう訳か今日に限っていきなりの『達海さん』呼び。理由を聞けばちょっと前に街中で会ったときに大介が俺をお兄ちゃんと呼んだことを、大介のお母さんが気にしたらしい。俺がひとりだったらそうでもなかったんだろうが、そのときちょうど会社の同僚が何人かいて、思い切り爆笑されたから。どうもおばさんはそれを気に病んだみたいだ。

会社の同僚といえども気心のしれた友人となんら変わらない連中ばっかで、笑われたからって俺は気にしない。それにあいつらが笑ったのは俺がそう呼ばれてるってことじゃなくて、大介を見たときの俺の表情の崩れっぷりが酷かったから、らしい。よっぽどそっちの方が酷い。俺はただ微笑んだだけなのに。

「そういや今日はどうしたんだ?」
「えっ!あ、あの…っ、えっと…!」
「ん?どうした?」
「ぁ…っ」

赤に染まった目尻にうっすらと涙が滲む。ちょっと尋常でない反応に心配になってきた。

「何か不安なことでもあるのか?相談に乗るぞ?」
「ぅ…、…うん」

こっくり、と大介は小さく頷くと、そっちに行っていい?と尋ねてくる。おいで、と手招くとテーブルにコップを置いてちょこんと隣に座った。

「猛お兄ちゃん、耳貸して」
「ん?内緒話か?」

ふたりしかいないのに内緒も何もないと思うんだが…。大きな声で言いたくないのかな、と耳を傾けると半分泣きそうなままの大介がぽしょぽしょと話し始めた。





「…えーとぉ…」
「…ぅ、」
「あー、泣くな泣くな!大丈夫だから!」
「、ぅ、ん」

ぐ、と涙を堪える大介の頭を撫でる。
話を聞いたところ、体の様子の変化に大介は戸惑ったらしい。病気とかではない。男なら一度は通る道、とでもいえばいいのか…その、ようは保健体育的なアレだ、アレ。精通、とか、夢精とかそういう話。

しかし、まさか相談される日がくるとは思わなかったぜ…。

「猛お兄ちゃん、俺、病気じゃあない…?」
「違う違う、むしろ反対」
「反対?」
「ちゃんと大介の体が成長して大人になってるってこと」
「おとな?」
「そう。学校でさ、習ったことあるだろ?」
「?」

あああー、どうしたらいいわけ、こういうの?なんで俺、にわか保健の先生になってんの?いや、そりゃ放っとくつもりもないけどさぁ…ううう、どう説明するかねー?

「…赤ちゃんてどうやってできるか知ってる?」
「―――!」

あ、さすがに知ってるか。瞬時に真っ赤になった大介の頬が正直だ。

「ざっと噛み砕いて言えば、赤ちゃんのもとがそこから出てくるわけ。んで、そんときにそこが…」
「わぁあっ!も、もういいよ!変なこと訊いてごめんなさい!」

さっきよりもさらに赤く染まった頬をした大介が耳を塞いで喚いた。こういう姿を見るとついさらにつつきたくなるんだから、俺は本当にイヤな大人だな。自覚してるくせに止めないあたりがとくに、な。
ニヒー、とつい笑ってしまう口許を手で隠しながらもっともらしい表情を作る。

「変なことじゃないだろ。そりゃまぁ恥ずかしくはあるけど、大事な話だろー?」
「う、ぅ…だって、」
「それに大介、知っといた方がいいこともあるし」
「…?」

こて、と小首を傾げる大介に悪戯心が刺激される。
ごめんなー、こんな大人で。ここで謝ったところでどうにもなんないけどさ。

「何回もパンツ汚すの嫌だろ?だからそうなる前に抜くの」
「ぬく?」
「言うよりやるのが早い。おいで」
「へ?え?え?」
「はい、おいでー」

小柄で非力だから引っ張れば簡単に腕の中にすとんとはまる。ちょっと感動的なくらいだ。なんかいいなぁ、これ…て、待て待て。何を言いだしてんの、俺。これはあれだぜ、あれ。教育、だろ。

「よっ、と」
「うわあ!」
「んだよ、でけぇ声出すなって」
「たたた、猛お兄ちゃん!? 何してんの!?」
「脱がなきゃできないじゃん」
「えええええ!?」

ちんたらやってたら大介が抵抗してきそうだからさくさくと進めることにする。

「ほい、じっとしてろよ…」
「っひ、…!」

大介が息を飲んで体を強張らせる。当たり前か、普通人に触られることなんてないもんな。ていうか俺も人のなんて触んねぇけどさ。触りたいわけないじゃん、普通。

「…っ、ぅ…んんっ」
「こうやって…触ってやると固くなるの、わかる?」
「…っ」
「気持ちいい?」
「わ、かんな…、なんか、へん…!」
「抵抗すんな、よくしてやっから」
「ふ、ぅ…っん!」

まだ成長しきってない幼いそれが素直に刺激に反応を示し始める。それにつれて大介の呼吸が乱れ始め、強張っていた体からも力が抜けてこちらにもたれかかってくる。
熱を発している耳に唇を寄せて声を潜める。

「よく見ろよ、大介…これ、自分でするんだからな」
「や…っ」
「嫌がんな、みんなしてるんだから」
「…っも…?」
「ん?なに?」
「ぉ、にいちゃん、も…?」
「…っ」

心臓がぎくりと脈打った。
真っ赤に染まった眦、涙の膜に覆われた大きな瞳にまっすぐ射抜かれる。

「みんな、だよ」
「…っふ、ぁっ…!」

きゅう、と大介の小さい手が俺の手に重ねられる。
幼い性器はすでに勃ち上がり、薄い皮の下、赤くなった先端から透明の雫が零れ始める。それを塗りつけるように動かすとき、大介の手も一緒に握り込むようにしてやると派手に大介の肩が跳ねあがった。

「やだ…!」
「やだじゃないのー。実地で覚えろって」
「ゃ、だ、こわい…!」
「俺がいるでしょうが」

その俺が間違いなく大介を混乱に陥れてるんだけどな。
ついでに言うと俺もただいま混乱に陥ってる。何かって?明らかに反応を見せ始めた自分の下半身にだよ!

(待て待て待て!なんだこれ、てか何かはわかってっけど、何でだよ!おかしいだろ、何に興奮してんだ、バカか俺は!)

「いた…っ!」
「あ、悪ぃ!」

思わず力が入ってしまったらしい。落ち着け、俺。気のせい、気のせい…。

「ぅ…、おにいちゃ、まだ…?」
「………」

あ、だめだこりゃ。
観念した方がよさそうだ。

「大介、ちゃんと覚えろよ」
「ふぇ…っひゃんっ!?」
「っと、暴れんな」

ぐり、と裏筋に指を這わしながら先端に軽く爪を立てる。慣れない感覚に数回扱くだけで大介の脚が痙攣のように震えだし、溢れだす密が量を増した。はくはくと浅い呼吸が忙しなくなる。大介の手は自分の意志ではもはや動いてなく、俺の為すがままになってしまっている。よくは見えないけど、たぶん目も瞑ってしまってるんだろう。

自慰行為を覚えさせるのが目的なら自主的に動くように言うべきなんだろうが、そもそもそんな目的自体がおかしいのだから、俺の行動もおかしいとしたもんだ。
小学生相手に、しかも同性相手にこんなことをしているなんて、おかしいとしか言えないだろ。まして歓びを見出してるなんて。ぐちゅ、と濡れた音に口角が上がる。

「い、っや、やだ、や…!」
「ほら、こんなになってる。もうイキそうだろ?」
「イ、…?」
「こっから精液出すこと。しっかり気ぃ持てよ」
「んっ、あ、は…っ、あ、ぁあ、―――っ!」

びくっと体が跳ね、次にくたりと弛緩した。じわりと体中に熱がこもり、短い呼吸が繰り返される。べとつき始めた手で服とかを汚さないようにテーブルの上のティッシュを手繰り寄せる。ざっと手だけ拭いて、まだぼんやりしている大介の服を直してやって体を抱きかかえると、向きを反転させた。

「起きてる?」
「…っ」

ばち、と目が合うと大介の頬に赤みが増した。未知の領域に思考がついていかないのか、声は発せられない。

「こうやって、勝手に出る前に出してやんの。気持ちよかった?」
「…わかん、なぃ…」

勃起して射精したということはちゃんと感じて気持ち良かったってことだ。でもまだ幼い大介の感性ではそう認識されないのかもしれない。というか、今の状況が異常すぎてそれどころじゃないのかも。
子供相手にこんなことをするなんて異常だ。でもひとつだけ言わせてもらうなら、大介以外にこんなことしたいとは思わないってこと。誰彼構わずだと本気で変態だろーがよ。さすがにそれはない。こいつだけ、てことに意味がある。惚れちゃえば、欲しくなるってのはある種当たり前の感情だろう。

「感情よりも体のが正直なんてなぁ…」
「?」

こて、とまた首を傾げる大介の前髪をかきあげて唇を落とす。びき、と大介が硬直したのがよくわかった。

俺を慕ってくる男の子。全幅の信頼を何の疑問もなく寄せてくれる素直な目。頭を撫でればうれしそうに笑う顔。触れてくる細い腕、小さい手。名前を呼ぶ声。スキンシップの延長で抱きあげれば小さい子じゃないと言いながらも首に腕を回して抱きついて来る。そんなまだ成長しきってない体温の高い体。
大介を視界に入れたときの俺の反応を同僚たちは笑った。俺は俺が自覚してる以上に感情が外に漏れてたらしい。

まん丸に見開かれた目を覗き込む。今の俺はこいつの目にどう映ってるんだろう?

「好きだよ、大介」
「ぇ、…?」
「食べちゃいたいくらい好き、てとこかな」
「俺、食べ物じゃない、よ?」
「食べ物じゃなくても食べちゃうものがあるんだよ」
「? ??」

てんでわかってない子の頭を撫でる。それだけこいつが幼いということだ。こんな大人に目ぇ付けられて、あげく手も出されて(まだ未遂、とも言える…よな?)、可哀想にな。でも手放してやれないよ。お前がどこかに行かないように、俺は打てる手は全て打つだろうし、幸か不幸かそういうのは苦手じゃなかったりする。

「とりあえず、今のことは誰にも言わないこと」
「う、ん」
「また不安になったらいつでもおいで」
「…」

くしゃくしゃと髪を混ぜるように撫でてやると、大介が無言で腕を伸ばして抱きついてきた。ある意味で恐怖体験を与えたであろう俺に、だ。
どうした、と問いかける前に大介が耳元で囁いた。

「猛お兄ちゃん、…ありがと」

その一言がどれだけいい人ぶった仮面をかぶった大人の理性をはぎ取るのか、この子供は何も知らないんだろう。





この愛が間違っている

が言えるだろう?




thx 獣





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