「ザキさん、コーヒー入りましたよ」
「んー、サンキュ。そこ置いといて」
「はい」

サイドの小さな棚の上にカップを置いて、ベッドの空いたスペースに座る。
ザキさんはというと、ベッドに俯せに寝転がったまま、黙々と雑誌をめくっていた。

練習も試合もないオフの日というのもある。今日はその内の一日。
出掛けることもあるけど、今日は一日中部屋でごろごろすることになりそうだ。

湯気をたてるコーヒーを一口啜る。テレビもつけてないから部屋にはザキさんがページをめくるときくらいしか音がない。

誰かと二人きり、しかも会話もなくひたすら無言という状況はきっと、相手がザキさんじゃなきゃ耐えられないと思う。
なんていうか、こうして二人してお互いに好きなことして、でも隣にはいて、ていう今がすごく心地いい。

(…やっぱかっこいいなぁ…)

とくにこれといってすることもなくて、ちらりとザキさんを見てるとそんなことをしみじみと思ってしまった。

体勢を変えることもなく器用にカップを傾ける姿は完全にリラックスしているのだろう、腕の動かし方がゆったりしている。
ただ寝転がってるだけ、ただ雑誌を見てるだけ、という格好なのにどうにもかっこよく見えて困ってしまう。純粋に羨ましいとも思うし。

(足長いし、細身だけど俺よりもずっとがっしりしてるし。ザキさん、当たり負けしないもんなぁ。…それに比べて俺はいまだにぶつかってこられたら吹っ飛ぶし、転ぶし…)

今までの試合のことを思い出して軽く落ち込みかけてるとザキさんが雑誌を閉じてベッドに座り直した。

「椿」
「はい」
「何か用か?」
「、は?」
「さっきからずーっとこっち見てっから何か言いたいことでもあんのかと」
「え、え!? ザキさん、気付いて…っ」
「あんだけバシバシ視線が刺さったら気付くに決まってんだろ」
「あ、うぅ〜…」

は、恥ずかしすぎる!
ありえないけど、考えてたことまで見透かされてそうで余計に体温が上がった。

「顔、真っ赤。なんでお前が照れんの」
「だっ、て…」
「ん?」

組んだ足に肘をついて、少しだけ下から見上げるような形でザキさんがこっちを見てくる。
口許は手で隠れてるけど、これって絶対。

「笑わないでくださいよ!」
「ははっ、だって椿、耳や首まで赤くなってるし」
「もうっ、ザキさんのバ…ひゃっ!?」
「バ、何?」

ニヤニヤと笑いながら耳たぶを触ってくる。それに飽きたら首筋を下りて鎖骨を撫でて、喉を伝って上がって顎から頬へ。
ザキさんの男らしい節の高い指が辿ったところが熱くて熱くてたまらない。

「椿…今、どういう顔してるかわかってるか?」
「か、お?」
「すっげーエロい顔してる」
「っな!?」
「んなに物欲しそうな顔すんならさ、たまにはお前から仕掛けてみろよ」
「なん、スか、それ…」
「お前が欲しがるもん、何でもくれてやるけど?」

さぁ、どうする?なんて言うザキさんは意地の悪い笑みを浮かべていたけど、悔しいくらいにやっぱりかっこよかった。





なキスもありだよ




thx 378





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